交通新聞社 電子版

墨滴 10月13日付

2023.10.13

 JR九州のクルーズトレイン「ななつ星in九州」が15日に運行開始10周年を迎える。当時、寝台列車が斜陽の時代に、〝世界一の豪華列車〟を目指して華々しくデビューした「ななつ星」は大きな反響を呼び、その後の全国的な豪華列車ブームの火付け役となった▼運行開始直後(2013年10~12月乗車分)の申し込み数の平均倍率は7倍超だったが、参加者の口コミで高い評価が広まり、1年後は19倍に。さらに2年後には24倍を超え、最上級「DXスイートA」は185倍に跳ね上がった▼「ななつ星」の生みの親である当時の唐池恒二社長(現相談役)が「王貞治さんが乗りたがっていると相談を受けたが、丁重にお断りした」と一切の優遇を排したエピソードは語り草だ。容易に乗れない希少性も根強い人気の一因ではないか▼当初3泊4日1人38万~55万円は強気の料金設定ともいわれたが、現在は来年4~8月分で125万~170万円と3倍を超える。オールインクルーシブ導入やサービス水準の向上などに伴うものだが、今なお人気に衰えが見えないのは、「ななつ星」の旅が乗客にプライスレスな感動を与えている証しだろう▼「ななつ星」の魅力は車内での体験だけでなく、沿線各地の人々にも支えられてきた。食材を提供する生産者、駅でもてなす人々など。その思いを乗せて「ななつ星」は走り続けていく。

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