特集 行楽の秋、自然を求め、花々を愛でて 筑波観光鉄道/京成バラ園
花や木々が色づき始め、見ごろを迎える季節になった。茨城県つくば市の筑波観光鉄道は、筑波山ケーブルカー(宮脇―筑波山頂間)で運行する朗読列車を紅葉であしらい、山頂駅の展望台では地元の伝統芸能が楽しめる企画を打ち出した。京成バラ園は、今春にお目見えした自走式ライド系アトラクションを秋バラ仕様に衣替えし、園内に「ハートの女王の無重力展望台」と銘打ったフォトスポットを設置している。京成グループの両施設の新たな魅力を紹介するとともに、仕掛け人の芳賀尚賢オフィスミゴト社長に話を聞いた。(大石 淳記者)
筑波山に新たな魅力加わる
■筑波観光鉄道
筑波山ケーブルカーは昨秋、車内をバラで装飾し、若手声優らによる朗読が楽しめる「ストーリーテラーズ レールウェイ」を期間限定で運行した。乗客数は前年同期比で大きく伸びたといい、今秋は装いも新たに紅葉をテーマに車内を彩った。
今月29日までの土曜日・休日に運行しており、期間中、筑波山頂の展望台では地元の「筑波山ガマ口上保存会」の協力を得て、筑波の伝統芸能「ガマの油売り口上」を披露する。飲食施設では12月3日まで、名物の「つくば山カレー」を紅葉仕立てにアレンジして提供している。
筑波観光鉄道の枝村誠社長は「コロナ禍で影響を受けた筑波山観光の回復に向けた起爆剤。昨年、当社は初のイベント列車として企画したが、多くの方にご乗車いただき、『アートフラワーがきれい』『声優の生声は迫力ある』といった声をいただきました」と振り返る。
飯野哲雄つくば市副市長は「筑波山にはいろんな観光資源があるが、新たな魅力が加わった。茨城デスティネーションキャンペーンも行われており、今年はインバウンドも回復基調にある。たくさんのコンテンツを用意し、また来たいと思っていただけるようにしたい」とイベント列車に期待を寄せた。
筑波山ケーブルカーまでは、首都圏新都市鉄道(つくばエクスプレス、TX)つくば駅から筑波山シャトルバスで約40分。TXの渡邊良社長は「山頂からの景色は素晴らしい。外国人の姿も多く、インバウンドの旅行先として今後、力を付けていくことだろう。つくばを冠にいただいている鉄道会社。筑波観光鉄道の関係者の皆さんと共に、誘客に努めたい」と話す。地域の事業者一体での取り組みにより、筑波観光に弾みがつきそうだ。
バラのテーマパーク目指し
■京成バラ園
「ハーベスト ローズガーデン」を開催中の京成バラ園(千葉県八千代市)。無重力展望台はバラに囲まれ、宙に浮いているかのような写真を撮ることができ、若い女性を中心に新たなスポットとして注目されている。
バラ園を運営する京成バラ園芸の諸川良太社長は「従来の園芸ファンはもちろん、新たなファン層の獲得を目指し、20~50代の大人の女性、アートやエンターテインメントに敏感な方も楽しんでいただけるバラのテーマパークを目指している。今秋は収穫祭をテーマに、さまざまなコンテンツを各所に散りばめた」と説明する。
また「無重力展望台は園内を一望できる高台に設置。今春に始まったアリスツアーズのビークルは秋の装飾を施し、『不思議の国のアリス』の世界観が広がるアリスフォレストでの冒険を楽しめる」と強調した。
「バラ香り 千の桜が彩るまち やちよ」を観光キャッチコピーに掲げる同市の服部友則市長は「日本最大級のバラ園という大きな売りにあぐらをかくことなく、これまで興味をお持ちでなかった方々にも足を運んでいただこうという姿勢が現れている。市もバラ、桜を観光のテーマコンセプトにしており、今後も(市の)内外から足を運んでいただけるように行政も頑張りたい」と述べた。
11月3~5日には「おでかけロリータ in京成バラ園 presented by 東京kawaiiスタジオ原宿」を開催。ロリータモデルが洋服選びからポージングまで指導してくれる。
京成ローズきっぷ秋を販売
京成電鉄、京成バラ園芸、東葉高速鉄道、東洋バスは11月23日まで、企画乗車券「京成ローズきっぷ秋」を発売している。
京成バラ園の最寄り駅、バス停までの往復乗車券とバラ園の入園券、園内の店舗で使える割引券をセットにしたもので、最大1460円割安になる。
一部駅を除き、京成各駅で販売中。
■インタビュー
バラ園、ケーブルカー舞台に
あふれるアイデアを多彩なコンテンツに
オフィスミゴト社長 芳賀 尚賢氏
――オフィスミゴトとは、どんな会社でしょう。
芳賀 プロデュース会社です。もう一つ付け加えるとすれば、オーダーメードのコンテンツを作ることができる会社といえるでしょうか。コンサルティング会社はアイデアを出すだけのところが多いようですが、弊社はコンテンツづくりから始まっています。
――ご自身のキャリアを振り返っていただけますか。
芳賀 テーマパークでのビップツアーガイド、旅行会社での添乗員などの経験があります。結婚式場で企画プロデュースに携わっていたこともあり、その時にお付き合いさせていただいた方々から個別にオーダーをいただくようになり、「それなら起業しよう」と立ち上げたのがオフィスミゴトです。これまでのキャリアは、どれも人を楽しませるところが共通点といえるでしょうか。
――京成バラ園の企画を担うことになったきっかけは。
芳賀 起業後、東京・神田明神でのイベントを企画・プロデュースしたのですが、当時の(京成バラ園芸の)社長が見にいらしていたようで後日、バラ園の誘客策について相談いただいたのが始まりでした。
今では園内のアトラクションの運営をさせていただいております。この事業が基軸になり、昨年からは(同じ京成グループの)筑波観光鉄道のケーブルカーを舞台に、企画・運営を手掛けております。今冬には、星座をテーマにした新たな企画も展開予定です。
――バラ園は今後も進化していくでしょうか。
芳賀 新たな企画を打ち出す時、「ワーディング」ということを意識しています。
本来持つバラの魅力はもちろんですが、「花束のメリーゴーランド」と銘打つなど、元からある力に言葉によるさらなる魅力付けを図る。すでにファンがいらっしゃる中、新たな顧客になり得る層にワーディングで訴えていくんです。
高く評価されているものをガラリと変えるのではなく、「まだ価値を生み出していないところに手を加える」ということも意識しています。
アリスツアーズで走るアリスフォレストは、未開発のエリアを使いました。園内には、まだまだ遊休地がたくさんあります。来園者が定期的に訪れ、自らプロデュースする「ガーデン」を作ってみるのはどうでしょうか。
スポット的なものだけではなく、今後は継続的に来園いただけるような企画も考えていきたいですね。(O)
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