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大手民鉄15社 24年3月期第1四半期決算 人流活発化でおおむね増収

2023.08.30

 大手民鉄15社の2024年3月期第1四半期決算が出そろった。新型コロナウイルス感染症の影響縮小で社会経済活動が徐々に正常化し、水際対策撤廃や新型コロナ5類引き下げなどで国内外とも人流が活発化。交通関係やホテル・レジャーなどの戻りが目立った。各社ともおおむね増収、各利益は増益となったが、京浜急行電鉄は前期の土地・建物売却の反動で、近鉄グループホールディングスは国際物流会社の子会社化による持ち分法利益減少や法人税増加などで四半期純利益が減益。西日本鉄道は国際物流の取扱高減少などで減収、営業減益となった。

 9社中8社が各利益増益【関東9社】

 運輸、ホテル、レジャー事業などが回復傾向。各社とも増収で、前期にホテル・バス営業所などを売却して固定資産売却益を特別利益に計上した反動で四半期純利益が減益となった京急を除き、8社が各利益増益だった。コロナ禍の間に進めてきた経営体質の改善も進み、東武鉄道は各利益が過去最高。ホテルの好調などがけん引役となり、相鉄ホールディングス、東急、京王電鉄の3社が通期業績予想の上方修正を行った。

 単体、もしくは核となる鉄道会社の鉄道輸送人員、旅客運輸収入は全社で増加。鉄道輸送人員は、前期比で東京地下鉄(東京メトロ)10・5%増、京成電鉄9・5%増、京急8・4%増、相模鉄道8・2%増、東急電鉄6・3%増、京王5・7%増、小田急電鉄5・3%増、東武4・9%増、西武鉄道4・9%増。コロナ禍前(18年度または19年度)との比較を公表している社の数値を見ると、減少幅は8~14%台と落ち込みが縮小している。

 旅客運輸収入は、3月に東急電鉄が運賃値上げ、東武、西武、小田急、相鉄、東京メトロの5社が鉄道駅バリアフリー料金制度の適用による鉄道運賃への料金加算を実施。利用増と合わせて増収につながった。残る京王と京急は10月1日に運賃改定、京成は来年春にバリアフリー料金制度適用を予定する。

 

 4社とも増収、経常増益【関西4社】

 近鉄GHD、南海電気鉄道、京阪ホールディングス、阪急阪神ホールディングスの4社も、コロナ禍の影響軽減により、鉄道利用などが増えてそろって増収。営業、経常各利益も増益となった。四半期純利益は、近鉄GHDを除く3社が増益。近鉄GHDは、昨年7月に国際物流企業の近鉄エクスプレスを連結子会社化したことが寄与して大幅な増収となったが、持ち分法による投資利益の減少、法人税などの増加が響いて、四半期純利益は減益だった。

 各社とも通期の業績予想は変更していない。ただし京阪HDでは、レジャー・サービス業や運輸業の増収、不動産販売業における期ずれによる増収などを見込み、第2四半期の売上高、各利益を上方修正している。

 鉄道輸送人員は、前期比で近畿日本鉄道4・5%増、南海6・0%増、京阪電気鉄道7・6%増、阪急電鉄4・5%増、阪神電気鉄道8・4%増。南海の空港線利用者は93・8%増と2倍近くに増えた。旅客運輸収入の増加率は8・8%~19・2%。近鉄では4月の運賃改定の効果、京阪、阪急、阪神では同月から鉄道駅バリアフリー料金を収受した影響が表れた。

 鉄道以外では、インバウンドや国内旅行需要の回復を受けて、前期赤字だった近鉄GHD、京阪HD、阪急阪神HDのホテル部門の営業損益が黒字に転換した。

 

 2期連続増収【名古屋鉄道

 名古屋鉄道は2期連続の増収で、各利益は大幅な増益に。バス事業を含む交通事業は、人件費や燃料費の上昇があったものの、輸送人員の増加で吸収し増収増益。単体の鉄軌道輸送人員は前期比で5・0%増、19年度比でも9割強まで回復した。レジャー・サービス事業では観光需要の回復が大きく、黒字転換している。

 不動産事業は名古屋や関西エリアで分譲マンションの新規販売が好調に推移し、利益を大きく押し上げた。一方で、流通事業は百貨店業の電気代、人件費の負担増が影響し、赤字幅が拡大した。

  

 全セグメント黒字【西日本鉄道】

 連結ベースで減収、営業利益は減益となったが全セグメントで黒字を計上。通期の業績予想は売上高のみ下方修正、経常、当期純利益は上方修正した。19年度比は売上高4・8%増だが、セグメント別にみると不動産業、物流業が全体を底上げし、運輸業は15・1%減。流通業、レジャー・サービス業もコロナ禍前の水準までは戻り切れていない。

 運輸業は、需要回復による旅客人員の増加などで、売上高は前期比8・0%増、セグメント損益は前期の7800万円の赤字から9億1600万円の黒字に大きく改善した。鉄道輸送人員は前期比7・1%増で19年度比約9割まで回復した。

 不動産業は増収増益。全体を下支えする物流業だが、国際物流事業の国際貨物取扱高が減少し、大幅な減収減益に。一方、レジャー・サービス業は、ホテル稼働率や客室単価の上昇、新規開業により、売上高が前期比約1・5倍と業績を大きく回復させている。

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