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特集 「ザ・ロイヤルエクスプレス」 四国で初運転

2024.02.13
四国で初めて運転されている東急のロイヤルEXP。JR貨物のEF210をJR四国の運転士が運転する(予讃線大西―伊予亀岡間)

 瀬戸内を心ゆくまで 東急・JR四国 両社の意思が合致して実現

 東急とJR四国は1月26日から、東急の観光列車「THE ROYAL EXPRESS」(ザ・ロイヤルエクスプレス)を使用した「THE ROYAL EXPRESS~SHIKOKU・SETOUCHI CRUISE TRAIN~」(ザ・ロイヤルエクスプレス 四国・瀬戸内クルーズトレイン)を運転している。両社とJR貨物、JR西日本の協力で実現したプロジェクトで、通常は伊豆エリアを走るロイヤルEXPの四国での運転は初。3月1日出発分までの全6回、瀬戸内の風景や食を心ゆくまで堪能できる3泊4日の旅が提供されている。(鈴木 宏治記者)

 

 JR貨物、JR西日本など協力

 ロイヤルEXPは、東急グループの伊豆急行の2100系電車「アルファ・リゾート21」(8両編成)を改造して2017年7月に登場。車両の内外装デザインはJR九州のクルーズトレイン「ななつ星in九州」などで知られる水戸岡鋭治ドーンデザイン研究所主宰が手掛けたもので、ゴージャスな旅が楽しめる。

 通常はJR横浜―伊豆急下田間を走行しているが、20年からは毎年夏、北海道の観光振興や地域活性化を目的に、JR北海道管内で運転している。実施に当たっては、東急、JR北海道とJR東日本(電源車・マニ50の提供)、JR貨物(車両回送)の4社連携プロジェクトを立ち上げた。

 四国での運転は、四国・瀬戸内エリアの観光振興・地域活性化が目的。全国各地の活性化を図りたい東急と、「長期経営ビジョン2030」に「Good Challenge」(グッドチャレンジ)を掲げるJR四国における〝新しいことへの挑戦〟の意思が合致した。また、伊豆や北海道でのツアーに参加したリピーターから、四国での運転の要望も寄せられていた。

 実現に向けては、両社とJR貨物、JR西日本が協力するプロジェクトを立ち上げ、協議を重ねた。各社の役割は、東急は▽旅行プランの企画・販売・運営▽地域連携▽車内サービスの提供。JR四国は▽瀬戸大橋線児島-四国内の運転▽地域連携への協力。JR貨物は▽伊豆からの車両輸送▽ツアー行程1日目の高松以降の運転における電気機関車(EF210)提供。JR西日本は▽同1日目の岡山―児島間の運転▽同―高松間の電気機関車(EF65)提供。また、行程中で使用する専用バス(2台)の運行と貸切船の運航は、両備グループが担当する。

 

 生演奏とともにこだわりの昼食

 魅力凝縮の4日間

 ツアーは岡山を起終点に、毎週金曜日出発、月曜日帰着の3泊4日。ロイヤルEXP乗車区間は、岡山―高松―琴平間(1日目)、多度津―松山間(2日目)、松山―伊予西条―今治間(3日目)、今治―高松間(4日目)で、列車降車後の周辺観光や宿泊施設へのアクセスは専用バス、4日目の高松港―新岡山港間は、列車と同じ水戸岡主宰デザインのフェリー「おりんぴあどりーむせと」を貸切で使用する。

 車内ではバイオリンとピアノの生演奏を聴きながら、日替わりで沿線地域(高松市、香川県坂出市、松山市、愛媛県伊予市)の4人の料理人によるこだわりの昼食を味わう。降車後は周辺観光を楽しみ、宿泊は香川県まんのう町、松山市(2施設から選択)、広島県尾道市瀬戸田町(生口島)の高級旅館。

 定員は15組30人。クルーは13人乗車で、ほぼ1組に1人が付き、きめ細やかなサービスを行う。ツアーの旅行代金は96万円から。募集人員に対しほぼ2倍の応募が寄せられ、リピーターの申し込みが多数あったという。

 

 狭小トンネル対策で機関車けん引

 四国運転の特色

 今回の運転区間は全て直流電化され、ロイヤルEXPも直流電車だが、全ての区間で電気機関車がけん引する。これは四国内の予讃線に狭小トンネルがあるのが最大の理由。折り畳み高さが基準値に収まらないため、ロイヤルEXPのパンタグラフそのものを取り外し、JR貨物との協議により、EF210を用意した。

 なお、EF210が土讃線多度津―琴平間に入線するのは初めて。この区間は架線設備の関係で、パンタグラフは1基のみ使用する。

 列車編成は北海道での運転と同様、通常時から3両減車した5両編成(1、4~6、8号車)で、全体では機関車と電源車を合わせ、7両編成となる。電源車には日頃のメンテナンスや異常時に備えて、東急の係員が常駐する。

 JR四国の運転士はEF210の運転経験がなかったため、JR貨物の協力を得て車両見学、実習、訓練運転などを行い、衝動のない快適な運転に努めている。車掌はロイヤルEXPの機器類の取り扱いを習熟。また、通常はない機回し(機関車の付け替え)作業が多数発生するため、関係各駅で担当社員への教育や訓練が行われた。

 両社では今回の運転でニーズを見極め、来年以降も同時期に四国で運転したい考えだ。

 

 ■驚きと発見があふれる旅を

 ◇松田高広東急社会インフラ事業部クルーズトレイン推進グループ統括部長

 (四国での運転は)街と地域、人と街をつなぐ鉄道会社としての〝DNA〟がスタンスとしてある中で、日本のいろいろな地域を元気にできればというわれわれの思いと、JR四国の地域振興やクルーズトレインへのチャレンジの気持ちが合致して始まりました。お客さまに驚きと発見があふれる旅を提供し、各関係者とウィンウィンになれればと思います。

 ■多くの方々の力添えに感謝

 ◇南壮憲JR四国鉄道事業本部運輸部運輸課長

 当社は観光列車は運転してきましたが、クルーズトレインは初めて。また、JR各社との協力はありましたが、民鉄も一緒にというのは今までなかったことで、多くの方々のお力添えに感謝しています。安全・安定輸送をしっかり担い、お客さまに四国を満喫していただき、四国の魅力の発見や、交流人口増加、そして次につながることを期待しています。

 ■お客さまの人生に寄り添う

 ◇車内で演奏を担当するバイオリニスト・大迫淳英氏

 音楽は旅を感動に変えます。テーマ曲「四国・瀬戸内の旅」は、ロイヤルEXPという舞台で、お客さまが主役のミュージカルや映画のような旅のイメージです。(制作に当たっては)事前に3回ほど沿線を回ってイメージを言葉にし、作曲家に伝えました。演奏を担当するおもてなしのクルーとして旅を共にし、お客さまの人生に寄り添っていきます。

 ■愛媛産の素晴らしさ伝える

 ◇3日目の昼食を提供する「鮨いの」(松山市)の猪野祐介氏

 お話をいただいた時、すごく面白いと思い、興味を持ちました。車内での提供は初めて。揺れるのが普段と違い、包丁を使う時はちょっとドキッとしますが、楽しみながらやっています。食材は魚もシャリ(米)も全て愛媛県産です。お客さまに愛媛の食材がどれだけ素晴らしいかをお伝えし、これをきっかけにもう一度愛媛に来ていただきたいです。

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