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特集 JR北海道 集客力あるコンテンツ開発に知恵 ファン向けイベント商品化

2023.11.20
261系の中間車を接写する参加者。「顔をじっくりと見られる機会はなかなかないだろう」と函館駅の撮影会で展示した

 昨年開始、これまで6本 鉄道事業の新たな収益源に

 JR北海道は、車両や工場といった会社の鉄道資産が持つ潜在的な魅力を活用した、鉄道ファン向けイベント商品の造成を進める。通販サイト「JRE MALL」を販売窓口に昨年から取り扱いを開始し、今月末に催行を控える1本を含めてこれまでに計6本を商品化した。集客力あるコンテンツ開発に知恵を絞り、経営基盤強化に向けた鉄道事業の新たな収益源としての定着を図っている。(三浦 瑞基記者)

 イベント商品は、「鉄道の日」関連イベントなど大勢に向けた、鉄道の魅力発信などを目的とした、誰もが無料参加できる企画とは趣旨を別にする。安全担保の面からも大人数相手には見学対応が難しい鉄道資産がある中、参加者数を絞り、有償サービスとして人員などのリソースを割き、現場機関の協力も得ることで、ファンにとって価値ある体験を商品として提供可能にしている。

 

 ■車両撮影会in苗穂運転所

 昨年8月27日に実施した第1弾「車両撮影会in苗穂運転所」(札幌市)は、車両の撮影機会を売る初の試みとなった。収益拡大への検討を全社的に深める中、苗穂運転所が発案し、話を受けた鉄道事業本部営業部を中心に同運輸部、同車両部、グループ会社の北海道ジェイ・アール運輸サポートも加わって商品化に至った。

 被写体は、引退を公表していたキハ183系(今年4月引退)の復刻塗装版と「ノースレインボーエクスプレス」(同)、2021年度末まで釧路方面で走り、今年3月から網走方面に活躍の場を移すと明らかにしていたキハ283系、キハ40形。当時注目を集めた気動車を中心に4車種を用意した。構内での撮影、目玉演出の同183系のヘッドマーク切り替え表示をPRし、1人1万8300円、午前、午後各回30人定員は即日完売。参加アンケートも好評だった。

 販売窓口については第1弾から全て「JRE MALL」としている。JR北海道は21年度をもって旅行商品販売拠点をすべて営業終了したことから今回のイベント商品の展開に当たって適当な販売方法が自社になく、既に鉄道イベントの販売チャンネルとして認知度が高かった、JR東日本運営の同サイトの採用を判断した。

 

 ■キハ183系車両〝最後の〟撮影会in苗穂運転所

 苗穂運転所撮影会商品は、今年5月20日に「キハ183系車両〝最後の〟撮影会in苗穂運転所」も開催した。

 開催前月にラストランを終えた183系を撮影できる最後の機会を切り口に1万8300円で売り出し、午前、午後各回30人の募集は早々に埋まった。

 同系をベースとしたノースレインボーエクスプレス含め、復刻塗装、「HET色」塗装の3車種を被写体とし、HET車のヘッドマーク切り替え演出やノースの運転台見学も提供した。

 ■ラッセル車両撮影会in旭川運転所

 撮影会の展開はこの秋から他エリアにも広がりを見せる。先月28日には旭川運転所(旭川市)で初のイベント商品「ラッセル車両撮影会in旭川運転所」(午前、午後各回30人定員、3万円)を設定。珍しい車両を間近で撮影できる希少性を売りに、DE15形ラッセル機関車「単線形」「複線形」と、一般公開は初となるキヤ291形ラッセル気動車を展示し、同複線形の運転台見学、雪かき翼動作見学も組み合わせた。愛好家世界でも「ニッチな分野の題材」という不安要素があった中でも定員の7割が売れ、札幌圏外の展開でも商機を見いだせる裏付けとなった。

 ■車両撮影会in函館

 今月11日には函館駅構内留置線(函館市)において「車両撮影会in函館」(午前、午後各回30人定員、1万5000円)を開催した。

 こちらも撮影会イベント商品は初。函館運輸所所属の現役車両を間近に撮れる機会として商品化し、DE10形ディーゼル機関車、キハ40形、キハ150形、キハ261系1000番代(先頭車・中間車の連結2両と、中間車1両のみの分割展示)、「はこだてライナー」に用いる733系1000番代、全5車種をそろえた。

 見どころは2種類の連結器機能を併せ持つ両用(双頭)連結器を同社管内で唯一装備するDE10形の展示、各種ヘッドマーク装着、愛称表示幕表示切り替え。売れ行きは8割に達した。

 ■苗穂工場 特別 見学ツアー

 構内を巡る、見学ツアーという切り口のイベント商品も手掛ける。22年11月4日開催「苗穂工場 特別見学ツアー」(札幌市)はその手始めで、今年も開催した従来の一般公開とは異なり、操業日のメンテナンス現場を各分野の熟練社員の解説で巡る。1人2万8000円、午前、午後各回20人定員は発売当日に完売。

 工場内では大型クレーンの車両つり上げ、トラバーサーによる車両移動、制輪子製造作業などを披露し、見どころとした一般初披露の新整備室ピットではキハ283系先頭車の車両床下見学が好評を得た。

 ■苗穂工場1日見学ツアー

 今月24日には、これを丸一日版に刷新した「苗穂工場1日見学ツアー」の催行を控える。

 前回好評の見どころに加え、「中間車」試運転への体験乗車、工場食堂での昼食、22年10月に引退したキハ281系の試作車(901号)展示・客室見学を新メニューに加えた。

 食堂では「日替わり定食」として出している、3種のフライをメインにした、工場ならではのスタミナ飯「ミックスフライ定食(1079㌔㌍)」を提供する。

 

 まだまだ潜む誘客素材

 これまでの参加層は本州方面からが大半を占める。道内鉄道ファンが見慣れたものでも、道外ファンには価値あるものとして映る誘客素材はまだまだ潜むものとみられる。

 視野を広げれば、世界有数の降雪地帯を走る鉄道をPRした、鉄道趣味の訪日外国人の取り込みも考えられ、富裕層に向けた少人数対応の高付加価値商品とした提供も一つの形に見える。

 別枠組みでは、北海道新幹線車両基地の函館新幹線総合車両所(七飯町)の見学を組み込んだ、旅行会社と連携した宿泊ツアーの展開も進められており、今年も8~10月に連携7社による設定があった。イベント商品のさらなる展開方として同様のタイアップも一つの可能性に考えられる。

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