特集 JR北海道 市場開拓・価値創造グループ 未来を開く挑戦-新たな事業領域を創出-
外部環境変化に強い事業構成へ
JR北海道は開発事業本部の市場開拓・価値創造グループを中心に、新たな事業領域の創出を目指す取り組みを進めている。コロナ禍を契機に外部環境変化に強い事業構成の確立を目指した2023年6月の同グループ立ち上げから1年余。NFT(非代替性トークン)プロジェクト、アバター(分身)で新たな体験価値を提供するメタバースなど、未来を開く挑戦が始まっている。(三浦 瑞基記者)
NFT
希少価値、気軽な価格設定
全く新しい事業の一歩目はNFTの活用。早くはない参入期となったが、流行時に商機を逃さないよう知見を得るのを狙いとする。プロジェクト名は「DISCOVERY/JR HOKKAIDO」。鉄道の新たな魅力を発見してもらう、現実(リアル)とデジタルを融合させた新しい価値の創造を目指し、第1弾全3商品を3~6月に発売してさっそく可能性を探った。
「記念KitacaNFT」は、根強いファンがいるKitacaキャラクター・エゾモモンガの描き下ろしアニメーション商品。1100円4作品と3300円2作品を各222個限定販売。特典1種も用意した。
「キハ40優駿浪漫カラーNFT」は、引退車両を撮った、21年に期間限定公開したVR(仮想現実)の復刻。「車内編」550円、「運転台編」3300円、「床下編」5500円を各100個限定で商品化した。
「メモリアルイベントNFT」は、根室線の営業終了区間で開催するイベント参加証(参加権)として10個限定、旧幾寅駅周辺での線路部品の社員解説や実物贈呈をセットして5万5000円で販売した。途中からは4割引クーポンも設けた。
第1弾は「厳しい」売り上げ結果となったが、次に生かせる情報を得たことが何よりの成果で、担当者は、今はない過去のものを再現したデジタルデータの提供、ツールとしての活用など、新たな切り口も見いだす。「近日公開予定」の第2弾では、希少価値を際立たせた商品、気軽に試せる価格の商品を検討する。
メタバース
リアル店舗との相乗効果を
メタバース事業は今夏始動。常設メタバース「バーチャル札幌駅JRタワー さつえき.world」(さつえきドットワールド)の運営、120万人以上が集まる世界最大級のバーチャルイベント「バーチャルマーケット」への出展を2本柱とし、まずは両方の合計で20万人アクセスを24年度目標に掲げた。
パートナーで運営主体は、JRタワーでショッピングセンター(SC)事業を手掛けるJR北海道グループの札幌駅総合開発。事業発案した同社もコロナ禍の業績悪化の経験から新事業の必要性を判断し、急成長が期待され、22年に8兆6000億円だった世界市場は、30年には124兆円に拡大すると総務省も予測するメタバースに着目した。
メタバース市場の消費者は男性が多いとされ、事業では主な客層が女性のSC事業と連携させることで、新たな客層の獲得など、メタバースとリアル店舗の相乗効果を目指すとともに、市場拡大を見据えた知見の蓄積を図る。
さつえきドットワールドは数あるプラットフォームから、スマートフォンからアプリなしでアクセスできる手軽さ、空間のカスタマイズの柔軟さなどから関連事業者のHIKKY(東京都渋谷区)が提供する「Vket cloud」を採用した。
ワールドは2空間構成。「札幌駅南口広場」は、SCの情報発信、自治体PRブース、「推し活」需要を見込む一般向け広告枠などのコンテンツを提供。「水の広場」はバーチャルユーチューバーなどのステージイベント開催空間とした。
訪問者増加に向けては、「関わる人が多くなればアクセス数も伸びていくと考える」と担当者。道内の自治体・企業と連携を深めて空間を創り上げていくほか、季節ごとのイベントに注力する。
バーチャルマーケットは、HIKKY主催だが、主会場の参加にはVRゴーグルなど専用機器が要る別のプラットフォームとなる。市場も現状は専用機器で参加するメタバースが主流で、出展では、さつえきドットワールドのPRと、利用者の趣向調査を進める。
初出展となった本年度夏会期は今月4日まで16日間開かれ、ブースではJRタワーになれるアバターや、北海道新幹線の迫力を体験できる仕掛けも展開した。ブースの写真をSNSにアップする参加者もいるなど一定の感触をつかみ、12月の冬会期にも引き続きの参加を予定する。
商品化許諾
新幹線開業時以上の効果
市場開拓・価値創造グループでは既存事業のさらなる収益化を狙いに引き取った業務もある。法務担当が従来担ってきた商品化許諾は23年6月に業務移管した。
北海道新幹線グッズの引き合いが多くあった新函館北斗開業時の経験を生かし、控える札幌開業で当時以上の許諾料確保やPR効果の創出を図るのが狙い。この1年は業務整理に充て、営業はこれから。これまで受動的だった分野だが、メーカーへの提案も積極的に進める。新幹線など車両のほか、「ポテンシャルを感じる」と担当者が期待を込めるのはKitacaのエゾモモンガ。グッズをはじめ各種売り込みを検討する。
はこビュン
JR東日本と連携した新幹線を使った荷物輸送サービス「はこビュン」も同グループの担当。新函館北斗―新青森間輸送、JR北海道フレッシュキヨスクで新函館北斗駅での荷物の積み降ろしを受託する中、取り扱った個数は21年度の約1・8倍に増加する。荷物増に伴う積み込み要員確保など課題はあるが、地方創生も視野に目指すのは、速達性が付加価値となるような北海道の商材を首都圏へ届ける手段としての定着。中期経営計画でも「新幹線物流の推進」を掲げ、一層の事業拡大を図る。
このほか、鉄道中古品販売の見直しにも着手する。同キヨスクによる従来の枠組みは、希少性ある中古部品の減少から継続が厳しくなってきている一方、「一定のニーズ」のある部品は今後も一定量見込め、収益性を高める販売手法を見極める。
JRらしくないことにも / 1年後には芽が・・・
◆市場開拓・価値創造グループの杉江真耶さん、澤章弘さん
新事業創出のミッションについて、「会社としてグループを後押ししてくれる流れにある中、JRらしくないことにも、みんなで勉強しながらトライしたい」「テクノロジーの変化で社会が変わる節目にどれだけチャンスを見いだせるかが要点。誰か一人でもそこを見つけられるチームでありたい」とそれぞれ意気込む。
◆次の挑戦のキーワードは「食」「観光」。宮治眞穂グループリーダー
今後の展開について「新規事業は成功確率が低いことも認識しているが、始めないことにはその先もない。1年後には事業の芽が出ているように頑張りたい」と語った。
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