特集 「ツーリズムEXPOジャパン2023大阪・関西」 旅を通じ地域の魅力発信
「万博」控え注目集めた旅の祭典
「ツーリズムEXPOジャパン2023大阪・関西」が10月26日から29日までの日程で開催された。大阪開催は2019年以来、4年ぶり。コロナ禍を克服した旅行・観光関係者らが一堂に集結し、旅を通じて感じられる地域の魅力を発信した。2025年に開催する「大阪・関西万博」に向け、起爆剤となるイベントとしても注目されたエキスポ会場の様子、主なセミナーやシンポジウムを紹介する。(大石 淳記者)
世界70ヵ国・地域から1200以上の企業・団体が出展
日本観光振興協会、日本旅行業協会(JATA)、日本政府観光局(JNTO)が主催する形となり、9年目を迎えた今回のテーマは「未来に出会える旅の祭典」。世界70カ国・地域から1200以上の企業・団体が出展した。
業界向けに開かれた初日のオープニングセレモニーには、ツーリズムEXPOジャパン組織委員長を務める山西健一郎日観振会長、髙橋広行JATA会長、蒲生篤実JNTO理事長をはじめ、来賓の石塚智之観光庁審議官らが出席。岸田文雄首相はビデオメッセージを寄せた。
4年ぶり大阪開催
主催者を代表して山西会長が「大阪・関西万博を控え、世界中から注目が集まる関西から完全復活した日本の観光産業の元気な姿、旅の未来像を世界に発信する絶好の機会。パンデミックにより、人々の価値観は大きく変化し、観光産業も未来に向け進化を遂げなければならない。新しい旅の形を体現するイベントに……」とあいさつ。
石塚審議官は「観光庁でも3月に閣議決定した観光立国推進基本計画の基本方針である持続可能な観光地域づくり、インバウンド回復、国内交流拡大という三つの戦略を進め、観光立国の復活にまい進する。世界最大級の旅の祭典が関係者にとって、新たな観光の可能性を感じる貴重な機会になることを願う」と述べた。
また、ゾリティサ・ウロシェヴィッチ国連世界観光機関(UNWTO)エグゼクティブ・ディレクターが「UNWTOの総会で、この先何年にもわたり観光業を変革していくための計画を策定した。日本を含む加盟国自身が立案したもので、今こそ大阪を始まりに計画を実行に移すべき。今回のエキスポがインスピレーションに満ち、生産性にあふれたものになることを願う」と激励。
持続可能な観光へ
岸田首相はビデオを通じ、「多くの観光地がにぎわいを取り戻している。観光はわが国の成長戦略の柱。コロナ禍という変化を力に変え、観光地の高付加価値化を強力に推進していく。住んでよし、訪れてよし、受け入れてよし、の持続可能な観光を実現していく」とのメッセージを寄せた。
■過疎地に活気を ! 国交大臣賞「沿線まるごとホテル」PJ
ジャパン・ツーリズム・アワード表彰式
優れた取り組みを水平展開し、さらなるツーリズムの発展に寄与するのを目的に創設。コロナ禍で3年ぶりの募集となった今回は、国内・海外から計140件の応募があり、国土交通大臣賞には沿線まるごと株式会社による「過疎高齢地域での『沿線まるごとホテル』プロジェクト」が選ばれた。
沿線まるごとでは、東京の過疎地で高齢者の多いJR東日本の青梅線沿線(奥多摩地域)を一つのホテルのように整備。無人駅をフロントに、空き家を客室に仕立てたほか、地域住民がキャストとなり、もてなすなど地域の課題を魅力に変えたことが評価された。
受賞を受け、同社では「コロナ禍に誕生した小さな会社で、無人駅に事務所を構えています。大きなホテルを造るのではなく、今も住民とともに、駅ごとのストーリーを紡いでいる最中です。まだまだ小さなプロジェクトですが、受賞を機に日本の観光に少しでも寄与できるよう、これからも過疎地における観光ツーリズムを確立していきたい」と喜びを表した。
同アワードは官民連携を図るため、今回から観光庁主催の「観光庁長官表彰」と統合。観光庁長官賞には「『観光客と職人の新たな付き合い方』による伝統工芸の再興」「震災復興とゼロからの持続可能な観光地域づくりの実践~まち全体を屋根のない博物館に~」「世界中の旅行者と世界中のツアーガイドをマッチングする観光ツアーマーケットプレイス『Go With Guide.com』」が選ばれた。
審査委員長を務めた本保芳明UNWTO駐日事務所代表は「審査を通じ、持続可能な観光への取り組みが広がっていると感じた。長官賞と一体となり、初めて個人から応募があり、より幅広く、さらに進化していくだろう」と総評した。
■シンポ開催 日本人の海旅促進議論
基調講演、第6回TEJ観光大臣観光会合が開かれた業界向けの初日に続き、2日目には三つのテーマ別シンポジウムを開催。
コロナ禍からの回復が遅れている、日本人の海外旅行の促進を図る議論を交わしたシンポでは、海外旅行未経験者の中にも関心を持つ人は半数以上で、このうち都市部より地方在住者の割合が高いとの調査結果を報告。「中・長期的に潜在市場への働き掛けが必要」と指摘した。
パネルディスカッションでは、海外(スペイン、タイ、マレーシア)の政府観光局が登壇。
各国における日本人観光客の動向などが報告された後、モデレーターを務める越智良典東洋大学国際観光学部国際観光学科客員教授が「双方向の交流を支える航空路線を維持するには国策として海外旅行を促進すべき。相手国への協力を求めなければならない」と総括した。
■JNTO トラベル&MICEマート
17年から合同開催しているJNTOの「VISIT JAPAN トラベル&MICE マート2023」は4年ぶりに完全な対面方式で実施。「アート・カルチャー」「アドベンチャートラベル」「サステナブルツーリズム」に関する商談会も行われ、日本の魅力を海外バイヤーに周知する絶好の機会となった。
25年の大阪・関西万博をPRする場としても重要な役割を果たした今回のエキスポ。期間中、会場内ではジャパン・ツーリズム・アワードの表彰式が行われ、一般公開の10月28日は4万8305人、同29日には5万597人が来場した。
業界日を含めた4日間では計14万8062人。次回は来年9月26~29日、東京・有明の東京ビッグサイトで開催される。
■ブース紹介 グランプリに「台湾」「韓国」
多彩な催しで旅の楽しみを訴求した世界各国のブース。毎年、旅のプロと旅の愛好家による投票により、グランプリを決定しており、今年は「台湾観光協会」(旅のプロ)と「韓国観光公社」(旅の愛好家)が輝いた。
台湾はキャッチフレーズ「ビビビビ!台湾」をイメージしたカラフルなデザインのブースで来場者の目を引き、まだ知られていないローカル情報を訴求。「チア台湾」によるパフォーマンスも注目を集め、愛好家の選ぶ準グランプリも受賞している。
一方、韓国はフレンドリーなスタッフが美容、グルメなど現地が誇る情報を発信。インフルエンサーのステージも人気で、プロ選定の準グランプリにも輝いた。
大学生が手作りブース
エキスポでは例年、大学生による手作りブースも出展される。今年はアカデミーコーナーと銘打った一角で、早くから観光学部を創設した立教大学の学生がブース来訪者を応対。
男子学生は「旅行先での触れ合いが好きです。新たな出会い、交流は今後も続き、また行きたいという気持ちにつながります。その仕組みを一度、学問として学びたいと入学しました」、女子学生は「高校時代に南米のボリビアに1年間留学したんですが、現地は高校から観光学に力を入れ、観光の授業が必須でした。将来は現地の発展に寄与したいと思い、帰国後に観光学の歴史ある大学を受験しました。将来はグローバルに活躍したい」と話していた。
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