交通新聞社 電子版

元旦号 JR東海 今年の話題

2024.01.01
追加投入を継続する東海道新幹線の新型車両N700S(JR東海提供)

 需要創出を力強く推進

 「N700S」追加投入継続

 「しなの」385系を開発へ

 リニア中央新幹線 各種工事を精力的推進

 コロナ禍で加速した働き方の変化、労働力人口の減少といった外部環境の変化を踏まえ、ICT(情報通信技術)などの最新技術を活用して効率的な業務執行体制を構築する「業務改革」と、新しい発想による「収益の拡大」の二つを柱にして、引き続き経営体力の再強化を推し進める。

 東海道新幹線は、10月で開業60周年を迎える。新型車両「N700S」は追加投入を継続。本年度内は4編成、2024年度7編成、25年度7編成を計画し、26年度末までに計59編成体制とする。

 安全対策面では、ホーム可動柵について、22年12月に「のぞみ」停車駅全ホームへの設置を完了(品川駅22番線を除く)。さらに新幹線全駅を対象に整備を進める。

 

 大規模改修と大地震に備え

 大規模改修工事は引き続き、土木構造物の健全性を維持、向上するため、経年劣化対策を実施。大規模地震への備えでは、脱線防止ガードの全線敷設をはじめとした脱線・逸脱防止対策について、28年度をめどに工事を完了する計画で継続する。

 このほか、運転士の業務支援を目的とした自動運転システム(GOA2)の導入に向け、走行試験を継続する。

 

 新型通勤電車さらに投入へ

 在来線は、新型通勤電車「315系」の投入を中央線名古屋―中津川間で開始し、昨年10月に同区間を運転する普通・快速列車は全て315系となった。3月に名古屋地区の東海道線の一部区間と武豊線、6月に静岡地区の東海道線に投入する計画。

 特急「しなの」で使用する383系は、新型特急車両「385系」に置き換える方針を昨年7月に発表。次世代振り子制御技術の開発を進め、26年度に量産先行車を用いた走行試験を行う。量産車の投入は29年度ごろを目標とする。

 カーボンニュートラル実現に向けて、燃料電池または水素エンジンを活用した水素動力車両の導入を目指し、24年度以降、水素エンジンの模擬走行試験を行う。

 また、環境保全と需要喚起の両立という観点から、4月以降、東海道・山陽・九州新幹線のネット予約&チケットレス乗車サービス「EXサービス」(エクスプレス予約、スマートEX)でもカーボンフリーの移動を可能とする取り組みを進めていく。

 安全対策としては、名古屋車両区検修庫の建て替えや高架橋柱の耐震化といった地震対策などに引き続き取り組む。ホーム可動柵の設置は、名古屋駅6番線で1月、5、7、8番線で6月から25年12月にかけてそれぞれ使用を開始する予定。

 

 「EX」新サービス利用促進

 営業施策では、「EXサービス」について、昨年10月に新サービスを続々と開始。乗車当日まで列車変更が可能な旅行商品「EX旅パック」、列車予約内容からお薦めの観光プランやホテルなどの情報を提供してEXサービスのサイト内で予約・決済を完結できる「EX旅先予約」などの新サービス利用を促進していく。

 利用拡大に向けた取り組みとしては、東海道新幹線の車内でオリジナルイベントを実施できる「貸切車両パッケージ」、自身の「推し」に会いに行く旅を提案する「推し旅アップデート」を引き続き展開。「会いにいこう」キャンペーンでは、ビジネスユーザーの出張利用を促して、需要回復を目指す。

 コロナ禍による働き方の変化を踏まえた東海道新幹線のビジネス環境の整備は、昨年10月に「のぞみ」の「S Work車両」を「ひかり」「こだま」にも拡大。併せて、3人掛け席の中央にパーティションを設置し、より広く、快適に仕事ができる「S WorkPシート」を導入した。ウェブ会議などに使える車内の「ビジネスブース」は、24年度中にN700S全編成で整備を完了する予定。

 超電導リニアによる中央新幹線計画は、引き続き品川―名古屋間で用地取得などを進めるとともに、工事の安全、環境の保全、地域との連携を重視し、駅やトンネル、高架橋、橋りょうなどの各種工事を精力的に進めていく。昨年10月には、山梨リニア実験線を除いて初めて、第一南巨摩トンネル(山梨県)の本坑が貫通した。

 一方、南アルプストンネル静岡工区は、静岡県の理解が得られず、トンネル掘削工事に着手できない状態で、27年の開業は難しい状況。こうした中、国土交通省が設置した「リニア中央新幹線静岡工区有識者会議」の「大井川水資源問題に関する中間報告」を踏まえた取り組みを行っている。このうち、工事の一定期間に静岡県外に流出するトンネル湧水の大井川還元方策について、昨年12月に発電事業者と基本合意書を締結した。また、南アルプスの環境保全に関しては、昨年12月に有識者会議の報告書が取りまとめられた。引き続き、地域の理解と協力が得られるよう真摯(しんし)に対応していく。

 超電導リニア技術に関しては、高温超電導磁石の営業車両への投入を前提とした安定運用に向けた検証、効率的な運営体制の確立に向けた開発・実証などを進め、一層のコストダウンとブラッシュアップを図る。

 海外展開については、米国において東海道新幹線システムによるテキサスプロジェクトと、超電導リニアシステムを用いた北東回廊プロジェクトに引き続き着実に取り組む。N700Sをベースとした新型車両を導入する台湾高鐵とは、技術コンサルティングに加えて、人材交流プログラムの実施で協力していく。

 

 共通ポイント対象順次拡大

 鉄道以外の事業では、昨年10月開始の同社グループ共通ポイントサービス「TOKAI STATION POINT」について、駅構内店舗などに対象施設を順次拡大する。また、駅構内では、土産品や弁当などをワンストップで購入できるように店舗の集約・大型化を進める。このほか、26年度開業予定のホテル「コートヤード・バイ・マリオット京都駅」の開発をはじめ、沿線における不動産開発に取り組むなど、今後もグループ事業拡大に向けて果敢に挑戦していく。

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