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特集 自由に、気ままに「ゆりかもめ」 ~東京・臨海副都心を訪ねて~

2024.10.11
東京臨海副都心の旅客輸送を担う「ゆりかもめ」

 鉄道開業発祥の地、東京・新橋からお台場を経由し、東京五輪・パラリンピック大会開催を機にさらなる発展が見込まれる臨海副都心・豊洲エリアまでを結ぶ新交通システム「ゆりかもめ」。ビジネスをはじめ地域住民の生活路線、国内外の観光・レジャー客輸送としての役割を果たしている。乗車すれば、誰でも運転士気分――は「ゆりかもめ」ならではのセールスポイント。自由に、気ままに、カモメのように……。いざ、出発進行!

 ■来年開業30周年

 「ゆりかもめ」は路線の愛称。同社ホームぺージによると、ゆりかもめは、くちばしと脚が朱色の小さなカモメで、和歌にも詠まれた隅田川の「都鳥」に由来しているそうだ。

 1965年に「都民の鳥」に選ばれたこともあり、「都民に親しんでもらいたい」との願いを込めて愛称とした。

 一方で、路線の正式名称は「東京臨海新交通臨海線」。事業者名は88年4月の会社設立時は「東京臨海新交通株式会社」だったが、近くを走る東京臨海高速鉄道(りんかい線)に似ていることもあったのか、98年4月、路線愛称に合わせた「株式会社ゆりかもめ」に変更している。

 95年11月、新橋―有明間で開業し、来年30周年。2002年11月に汐留駅を新設し、06年に有明―豊洲間を延伸した。営業キロは14・7㌔。新橋、豊洲を含めて16駅を設置し、新橋―豊洲間の所要時間は約31分。1編成6両の車両が旅客を運ぶ。

 ■優れた安全性、低公害性

 ゆりかもめの特徴は、専用高架軌道のため交通事故や渋滞の心配がないこと。加えて、電気を動力源としていることから排気ガス、ゴムタイヤ使用による振動、騒音なども発生しない安全性、低公害性などに優れた点にある。

 列車運行システムは、今日の労働人口減少などを先取りする形で、当時としては画期的な無人自動運転を採用。中央指令所―各駅(駅ATO制御装置)―車両間での列車運行に関する情報伝達をシステム化することによって、安心・安全・快適な輸送を担保する。ホームはフルスクリーンタイプのガラス張りとして、ドアは列車到着時のみ開閉し、乗客の転落事故などは発生しないようにしている。

 両先頭車には異常時用の運転台は設置されているが、平常時は使用しない。進行右側の運転席(2人掛け)は子ども、走行風景を撮影したい鉄道ファンらが真っ先に陣取る場所として人気を集める。

 近年は東アジアからの訪日外国人客の姿が見られ、乗車したこの日も着席したアジア系訪日客がスマートフォンで移り行く車窓風景を撮影していた。

 ■平日1時間、最大18本

 列車本数は、新橋発の平日はビジネス需要を考慮して7時台14本、8時台18本、9時台16本、17~18時台各17本、データイム10~15時台でも各12本を確保する。土曜日・休日は、観光・レジャー需要も踏まえて10~18時台に各15本、前後の8~9時台と19~21時台は各時間帯12~13本とした。

 土曜日・休日のデータイムはおおむね4分間隔のため、前述の運転席に座りたい人は起終点の新橋、豊洲いずれかの駅で1~2本(4~8分程度)待つことで確実に着席できる。「一日乗車券」(大人820円、子ども410円)の購入、乗車をお勧めしたい。

 ■勝どき延伸は?

 2006年の有明―豊洲間延伸開業後の次なる目標として、勝どき駅(東京都営地下鉄大江戸線)方面への延伸計画があった。終点の豊洲駅には駅先端部から軌道の土台部分が構築されている。

 21年の東京五輪・パラリンピック大会開催を機に、晴海などの湾岸エリアでの新たな「まちづくり」を模索する東京都だが、一方で22年11月に現在の東京駅の北東側に新たな「東京駅」を設けて、新銀座、新築地、勝どき、晴海、豊洲市場、有明・東京ビッグサイトの各駅を設置(いずれも仮称)する新たな鉄道ルート構想を発表し、具体化に向けての動きを進める。

 2000年の運輸政策審議会答申では、ゆりかもめ豊洲―勝どき間が「目標年次(15年)までに整備着手することが適当である路線(A2)」とされたが、その後の経済情勢の変化、インバウンド施策などと相まって、「今後整備について検討すべき路線」からは除外された。

 ゆりかもめ延伸による勝どき方面へのルートが実現すれば、当初計画通りに臨海副都心部をほぼ円形上にカバーする路線の完成となるが、整備コストの問題、開業後の需要予測などの面で課題も多く、事実上白紙状態からの実現への道筋は見えてこない。

 ■沿線随一のロケーション

 ・レインボーブリッジ

 港区内に位置するお台場海浜公園は、東京都港湾局が所管する海上公園。延長約800㍍の人工砂浜「おだいばビーチ」からは、臨海副都心のシンボル・レインボーブリッジを望める沿線随一のロケーション。砂浜は伊豆諸島の神津島の砂を使用している。

 付近には東京都観光汽船の日の出桟橋方面、浅草方面のクルーズ船の発着場もある。東京都では先ごろ、お台場海浜公園内に世界最大級の「噴水」を整備することを明らかにしており、完成後は新たな人気スポットになりそう。

 ・DAIBAの「自由の女神」像

 お台場海浜公園には、レインボーブリッジを背に「自由の女神」像が立っており、観光客の人気撮影スポットになっている。女神は臨海副都心の動静を静かに見つめている。

 日本とフランスの友好関係の証しとして、パリ市セーヌ川のシーニュ島にある自由の女神像の実物が日本に移築されたのが1998年4月。99年1月までの期間限定だったが、フランス帰国を惜しむ日本人の要望を受ける形で、女神像の型を基にレプリカが制作され、2000年12月から常設展示されている。

 ■江戸の風情食の世界

 築地(中央区)から豊洲(江東区)に移転した東京都中央卸売市場の盛り上げを図るため、場外エリアを活用して今年2月1日に開業した「豊洲 千客万来」。豊洲市場に隣接する施設ならではの「食」を提供する食楽棟「豊洲場外 江戸前市場」と温浴棟「東京豊洲 万葉倶楽部」の二つの施設で構成。最寄り駅は、ゆりかもめ市場前駅。

 「豊洲場外 江戸前市場」は江戸の街並みを模した木造(一部鉄骨造り)の飲食街で、木造耐火商業施設としては日本最大規模とか。「東京豊洲 万葉倶楽部」は神奈川県の箱根や湯河原から温泉の源泉を毎日運び入れる。温浴棟8階には臨海副都心の景色を眺められる「千客万来足湯庭園」を併設しており、無料で利用できる。

 ■鉄道フェスティバル 13、14日に開催

 今年も国内最大級の鉄道イベント「第31回鉄道フェスティバル」が13、14日の2日間、東京都江東区のお台場イーストプロムナード「石と光の広場」「花の広場」で行われる。

 最寄り駅は、ゆりかもめ東京ビッグサイト駅、有明駅、東京臨海高速鉄道りんかい線国際展示場駅。「鉄道の日」実行委員会の主催。鉄道に対する理解と関心を深めることを目的に、鉄道事業者や協賛企業によるブースが開設され、企業プロモーションはじめ、各社商品やグッズの販売を予定。10~17時。

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