大手民鉄15社 各事業回復、業務見直しなど奏功 23年3月期第1四半期決算
大手民鉄15社の2023年3月期第1四半期決算がまとまった。前年同期(22年3月期)は、21年3月期からのコロナ禍の影響が引き続き大きく、第1四半期の経常損益は6社が赤字だったが、今期はコロナ禍の影響が続いているものの、行動制限の緩和などで事業環境が改善。各事業の回復や業務見直しによる固定費削減などが奏功し、全社黒字となった。
各社、交通関係の戻り顕著【関東9社】
関東民鉄では前々年の21年3月期第1四半期は、全国一斉休校の要請に加え、全都道府県への緊急事態宣言発出などで鉄道利用が最も落ち込んだ時期であり、全社が経常損益、四半期純損益とも赤字を計上した。
前期の第1四半期は、リゾート事業の影響が大きい西武ホールディングス、成田空港輸送の割合の高い京成電鉄、運輸業が大宗を占める東京地下鉄(東京メトロ)の3社が引き続いて赤字となった。経常赤字の京浜急行電鉄は東京・高輪エリアなどの物件売却で四半期純損益は黒字、京王電鉄は助成金収入などで経常黒字も四半期純損益では税負担などで赤字だった。
今期は、小田急電鉄、東急、京急の3社は四半期純損益で減益となったが、これは前期の政策保有株式売却や固定資産売却の反動などが主な要因。営業収益では、交通やホテル・レストランなどの事業の回復を背景に、全社が24・2~3・5%の増収となった。
各社とも交通関係の戻りが顕著で、加えて売り上げ増加率トップの東武鉄道では、10周年を迎えた東京スカイツリーの集客や、自治体の感染防止対策事業受注などでレジャー事業の売り上げ増が目立った。
単体あるいは核となる鉄道会社の鉄道輸送人員、旅客運輸収入は全社で増加。輸送人員の前期比増加率は、東京メトロ(15・9%増)、小田急(14・0%増)、京急(13・5%増)の順に高く、以下京王(13・1%増)、西武(12・9%増)、東急(12・0%増)、京成(11・1%増)、東武(9・0%増)、相鉄(8・1%増)と7社で2桁増となった。
ただし、コロナ禍前の実績には届いておらず、19年または20年3月期第1四半期との比較を公表している社によると、鉄道輸送人員でおおむね20%前後の減少となっている。
旅行、ホテルなど利用回復【関西4社】
関西民鉄4社も、緊急事態宣言の発出もあった前期と比べると、コロナ禍の影響が軽減し、鉄道利用などが増えてそろって増収に。営業損益は、前期黒字の南海電気鉄道、京阪ホールディングス、阪急・阪神ホールディングスが大幅増益。前期145億7900万円の赤字となっていた近鉄グループホールディングスも63億1700万円の黒字を計上した。
しかしながら、コロナ禍前の水準には戻っておらず、業績アップの要因としては前年同期の緊急事態宣言の発出に伴う外出の自粛、店舗休業、施設の営業縮小の反動によるところも大きい。
鉄道輸送人員の前期比増加率は、阪急(18・6%増)、阪神(18・3%増)、南海(16・1%増)、京阪(16・1%増)、近鉄(13・7%増)と全て2桁増。旅客運輸収入は29・3%増~22・7%増と20%を超えている。
厳しい事業環境ながら、旅行、ホテル、レジャーなどの利用が戻ってきていることは明るい話題。近鉄のホテルは、昨年10月から一部のホテル資産を売却して受託事業へ移行したが、出控え影響の緩和で、宿泊や食堂の需要が増えたため、増収となり、損益が改善した。
阪急・阪神では、阪急阪神ホテルズの直営ホテルにおける今年6月時点の国内宿泊需要は18年度同月比で8割程度まで回復(19年度以降開業のホテルを除く)。旅行の国内ツアーは今第1四半期、18年度と同水準で推移した。
四半期純利益は各社増益。京阪は、固定資産売却益を特別利益に計上したことが数字を押し上げた。通期の業績予想は、7月に国際物流企業の近鉄エクスプレスを連結子会社化した近鉄グループホールディングスが上方修正、それ以外の各社は総合的な判断から据え置いている。
3期ぶり黒字転換【名鉄・西鉄】
名古屋鉄道は、交通事業の輸送人員とレジャー・サービス事業の観光需要が一定程度回復して増収となり、営業損益と四半期純損益は3期ぶりの黒字に転換、経常利益は大幅な増益となった。鉄道輸送人員は8・5%増加。
西日本鉄道は、国際物流事業で運賃原価の高止まりによる販売価格の増加、運輸、レジャー・サービス業の需要回復で増収となり、各損益は3期ぶりに黒字転換した。鉄道輸送人員は10・9%増加している。
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