交通新聞社 電子版

墨滴 9月28日付

2023.09.28

 先日、取材で奈良を訪れた。プライベートを含めても関西地方に行くことは少なく、奈良に至っては中学校の修学旅行以来。歴史ある寺院や名所を巡り、郷土料理も堪能できた▼全ての行程を終えて夕方、近畿日本鉄道の大和西大寺駅へ。エスカレーターに乗っていると、家路を急ぐ学生やビジネスマンが、墨滴子を追い越す形で次々と歩いていく。同じくエスカレーターの左側に立つ人は誰もいない。帰りの近鉄特急の車内でこの違和感の原因を思い出した▼関東でエスカレーターを利用する際は、立ち止まる人が左に並び、歩く人が右側を使う「左立ち」だが、関西では反対の「右立ち」が一般的。このことを知ってはいたが、関東育ちの長年の経験で、無意識のうちに左側に立っていた▼関西の「右立ち」の由来は一説によると、1967年に阪急電鉄が梅田駅のエスカレーターで「左側をお空けください」とアナウンスしたのが最初で、これが浸透したという。右利きの人が多く、右手で手すりをつかみやすいこちらの方が合理的な気もする▼近年では危険な事故を防ぐため、エスカレーターでは歩かず立ち止まるように各自治体や鉄道事業者が呼び掛ける。今回のように、身体に染み付いた習慣を一朝一夕に変えるのは難しいが、まずは利用者一人一人の心掛けを改めるための取り組みが大切なのだろう。

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