特集 京急「newcalプロジェクト」始動
エリアマネジメント構想深度化 起点となった「コクーン」
沿線価値共創戦略に基づき名称など刷新
新しいローカルのあり方を発見、発信
京浜急行電鉄は3月、沿線エリアマネジメント構想「newcal(ニューカル)プロジェクト」を始動した。従来のエリアマネジメント活動「COCOON(コクーン)」を刷新、「新しい(new)ローカル(cal)のあり方」を地域と一緒に生み出す取り組みだ。移動と地域の魅力づくりの相互価値共創をビジネスモデルの中心に据え、沿線の各エリアに「移動+住む・働く・楽しむ・学ぶ」がそろう中核拠点が連なる「多極型まちづくり」を目指す。(鴻田 恭子記者)
起点となったコクーンの取り組みは、2016年ごろに開始された。京急は同年秋、神奈川県三浦エリアの再生を掲げて本社に三浦半島事業開発部を設置。若手社員の勉強会、東京大学とのワークショップなどを重ねる中、18年に地域と連携して三浦半島での過ごし方を提案するイベントが開かれた。この企画名が「三浦Cocoon」だった。
20年にはscheme verge(スキームヴァージ)社(東京都文京区)が京急のアクセラレータープログラムに参加。三浦半島の情報を集約した観光プラットフォームを作り、京急の担当者とブラッシュアップを行う中で、これを三浦コクーンと命名。地元観光事業者・自治体など60団体によるコミュニティー「Cocoon Family(コクーンファミリー)」を立ち上げ、コンテンツ集約・データ連携のプラットフォームと合わせ、事業者を緩やかに組織化する提案を行った。
この仕組みは同年秋、京急の観光型MaaS(マース)「三浦Cocoon」としてサービス開始、翌年には予約決済機能も追加された。三浦コクーンの名称も単にMaaSを指すのではなく、エリアマネジメント組織による地域課題解決の取り組みそのものとなった。22年以降、コクーンの対象エリアはおおた(東京都大田区など)、横浜(横浜市中区、南区)、川崎(川崎市)、かなざわ(横浜市金沢区)に拡大している。
京急では、2024年度からの中期経営計画を見据え、「沿線価値共創戦略」を策定。これは、移動サービスを提供する「移動プラットフォーム」と地域の魅力づくりを行う「まち創造プラットフォーム」の相互価値共創をビジネスモデルの中心とし、沿線各エリアに「移動+住む・働く・楽しむ・学ぶ」がそろう中核拠点が複数存在する「多極型まちづくり」を目指すものだ。
ニューカルへの刷新は、この戦略に伴うもの。地区ごとの名称を「三浦newcal」などに、参画団体の総称も「newcal family」にそれぞれ変更した。三浦半島で育ったコクーン(繭〈まゆ〉)が沿線へと広がり、各地でnew culture(新しい文化)を生み出す思いを込めた。
プロジェクトでは、地域の個別の活動をつなぎ、続ける仕組みを作ることを重視。エリアごとに生活圏の充実を目指すローカライズをリアルで、MaaSやモビリティー基盤、予約決済基盤など共通基盤整備をデジタルで進め、これらを融合したまちづくりを進めていく。
担当する新しい価値共創室エリアマネジメント推進担当の佐々木忠弘課長は「弊社沿線はエリアごとに課題が全く違う。三浦半島なら人口減少と観光活性化、大田区ならものづくりと臨海部活性化、川崎ならこれからのハード開発と並行するコミュニティーづくりなどが課題で、他のエリアの取り組みがそのまま生かせるわけではないからこそ、ローカライズが必要になる。一方でデジタルやモビリティーに関しては他のエリアでも展開できる」と話す。実際、モビリティーについてはキックボードが三浦から、シェアサイクルが横浜からそれぞれ他地域に広がっている。
活動内容も整理
活動内容も改めて整理、地域との連携を具体化する四つの共創活動を▽組織化▽地域拠点整備▽MaaS整備▽モビリティー整備――とした。組織化はニューカルファミリーによる地域課題解決や、23年5月に立ち上げた京急沿線子育て応援ネットワーク「Weavee(ウィービー)」のママクリエーターによる情報交換、地域ビジネス創出などの取り組みがある。
ニューカルファミリーは3月時点で地域事業者、自治体・観光協会、大学・教育機関、サポート企業、さらに京急の「みさきまぐろきっぷ」「葉山女子旅きっぷ」加盟店など343団体。ウィービーは28団体で組織している。
地域拠点整備は、地域に開かれた交流拠点をニューカルスポットとして整備するもの。22年夏に再開発までの期間限定(今月末まで)で設置した平和島駅前の拠点が地域の自然発生的なにぎわい創出、まちづくりの担い手の発掘・育成などにつながったことから、他エリアにも拡大。川崎では八丁畷駅前に「Park Line 870(パークラインはっちょう)」を設け、ビアフェスなどのイベントを共催した。京急では黄金町ロックカク(横浜)など、既存施設も改めて地域拠点として位置付けている。
MaaSでは各エリアの地域情報サイトを展開。トップページから三浦、かなざわ、横浜、川崎、おおたの各ニューカルサイトをタブで回遊でき、おすすめスポットの紹介や予約・決済、デジタル企画きっぷの決済などもできるようにした。経路検索は鉄道、バスの乗り換えのほか、レンタカー・レンタサイクルなども対応。登録会員数は現在13万人、26年度に20万人が目標だ。
モビリティーについては事業拠点を共同で開設。カーシェアやシェアサイクル、電動キックボードなど移動手段の貸し出し拠点のほか、荷物の預かり拠点や駐車場(シェア用地)なども場所確保のため共同で声掛けしている。現在の拠点は92カ所、26年度150拠点を目指す。24年度は新たに品川(東京都品川区など)、上大岡(横浜市港南区、磯子区など)のニューカルのスタートも予定する。
「EaaS」構築
同社では将来像として、デジタル基盤を活用し、地域の移動やサービスを一元化して沿線全体を1つのサービスにする「EaaS(イアース、沿線 as a Service)」の構築を打ち出している。
■newcal PJ
まちづくり情報配信サイト
もたらした効果など紹介
京急ではニューカル始動に当たり、まちづくり情報配信サイト「newcal PJ(ニューカルピージェイ)」を開設。こちらは、ニューカルプロジェクトについて、柔らかい筆致やイラストを交えて紹介。各エリアの拠点整備やエリアマネジメント活動のレポート、活動がもたらしたまちづくりへの効果、ニューカルファミリーやウィービーメンバーへのインタビューなどを発信している。
サイトデザイン・ディレクションは沿線の横須賀市で老舗飲食店の事業を承継しつつブランドプロデュース業などを手掛けるストラテ(横浜市)代表の簗瀬大輔氏が担当。サイトの運用はウィービーメンバーのクリエーター、ライターらによる。
「まちづくりの中で、一つ一つの活動にどういう意味があったかを、ウィービーで活動する方に書いてもらっている。同業者など街づくりに関わる関係者の方に見てほしい」(佐々木課長)
検索キーワード:京浜急行電鉄
184件見つかりました。
21〜40件を表示
-
2024.08.20 民鉄・公営・三セク 予定・計画・施策
京急 三浦エリアのオープントップバス 車両・コース刷新で9月運行開始へ
京浜急行電鉄は、神奈川・三浦半島の活性化を目的に運行するオープントップバスの車両を更新、9月5日から「KEIKYU OPEN TOP BUS MIURA(京急
-
2024.08.20 その他業種分類 記録・調査・統計
月間日誌 24年7月
【国土交通省関係】 国土交通省が鉄道・軌道における動力車操縦者運転免許の受験資格などについて、受験可能な年齢を18歳以上に引き下げる(1日) 国交省が北陸新幹
-
2024.08.20 民鉄・公営・三セク 予定・計画・施策
京急 訪日外国人観光客向け 手荷物当日配送サービスの実証実験
京浜急行電鉄は19日、羽田空港第3ターミナル駅で訪日外国人観光客向けの手荷物当日配送サービスの実証実験を開始した。
-
2024.08.16 民鉄・公営・三セク 予定・計画・施策
京急 「KEIKYU OPEN TOP BUS MIURA」運行へ
京浜急行電鉄は9月5日から新しい2階建てオープントップバス「KEIKYU OPEN TOP BUS MIURA」を運行する。
-
2024.08.15 民鉄・公営・三セク 予定・計画・施策
京急 「みうらマリンスポーツファミリーSUP大会」を開催
京浜急行電鉄は31日、神奈川県三浦市の三浦海岸で「みうらマリンスポーツファミリーSUP(スタンドアップパドルボード)大会」を開催する。
-
2024.08.15 民鉄・公営・三セク 予定・計画・施策
京急 Vlogカメラ無料レンタル デジタル葉山女子旅きっぷ購入者に
京浜急行電鉄とキヤノンマーケティングジャパン(東京都港区)は、「デジタル葉山女子旅きっぷ」購入者限定で、動画撮影できるVlogカメラ「PowerShot V1
-
2024.08.15 民鉄・公営・三セク 予定・計画・施策
首都圏公民鉄 台風7号接近 列車運行の影響示唆 16、17日
首都圏の東武鉄道、西武鉄道、京成電鉄、京王電鉄、小田急電鉄、東急電鉄、京浜急行電鉄、東京地下鉄(東京メトロ)、相模鉄道、東京都交通局、東葉高速鉄道、首都圏新都
-
2024.08.14 民鉄・公営・三セク 決算・財務
25年3月期第1四半期決算 京浜急行電鉄
【京浜急行電鉄】 連結売上高728億6000万円(前年同期比17・4%増)、営業利益87億900万円(58・2%増)、経常利益85億2300万円(57・6%増
-
2024.08.09 民鉄・公営・三セク 予定・計画・施策
京急など 「川崎ビール祭2024」を開催
京浜急行電鉄と川崎祭り実行委員会はきょう9日から12日までと15~18日、本線八丁畷駅前の地域交流拠点「Park Line 870(はっちょう)」で「川崎ビー
-
2024.08.08 JR東日本 予定・計画・施策
JR首都圏本部など 大井町駅ホームを一部拡幅
11月17日線路切り替え JR東日本首都圏本部と同社東京建設プロジェクトマネジメントオフィス、電気システムインテグレーションオフィスは6日、同社が東京都品川区
-
2024.08.08 民鉄・公営・三セク 予定・計画・施策
京急 「上大岡newcal」の活動開始
京浜急行電鉄は9日から、「newcalプロジェクト」第6弾として「上大岡newcal」の活動を開始する。
-
2024.08.07 民鉄・公営・三セク 決算・財務
京浜急行電鉄 25年3月期第1四半期決算
京浜急行電鉄は6日、2025年3月期第1四半期決算を発表、交通事業における羽田空港輸送が好調に推移したことなどで、連結売上高は728億6000万円(前年同期比
-
2024.07.31 民鉄・公営・三セク 予定・計画・施策
京急 「U―23夏休みおでかけキャンペーン」
京浜急行電鉄は8月1日から31日まで、6歳から23歳を対象に「U―23夏休みおでかけキャンペーン」を実施する。
-
2024.07.29 運輸関連団体 予定・計画・施策
日本民営鉄道協会 台湾鉄道観光協会と鉄道観光の協定締結
交流人口拡大で 日本民営鉄道協会と台湾の台湾鉄道観光協会は20日、鉄道を軸とした観光交流人口の拡大と地域活性化を目指し、「日本と台湾における鉄道観光プロモーシ
-
2024.07.19 民鉄・公営・三セク 予定・計画・施策
京急 「みなとみらいエンタメ経済圏可視化コンソーシアム」に参画
京浜急行電鉄は、産学官連携プロジェクト「みなとみらいエンタメ経済圏可視化コンソーシアム」への参画を発表した。
-
2024.07.12 民鉄・公営・三セク 人事異動・組織変更
京浜急行電鉄人事 6月27日付
京浜急行電鉄(6月27日付) 生活事業創造本部まちづくり推進部長兼生活事業創造本部品川開発推進部担当部長兼新しい価値共創室部長(生活事業創造本部品川開発推進部
-
2024.07.08 JR東日本グループ 人事異動・組織変更
総会・役員人事 ルミネ
ルミネ(6月27日) 常務・立川店長(常務・営業本部副本部長)髙橋好一 取締役・総合企画本部長・総合企画本部総合企画部長・監査担当(取締役・総合企画本部長・総
-
2024.07.05 民鉄・公営・三セク 予定・計画・施策
京急 夏詣キャンペーン 20神社が参加 オリジナルはさみ紙など贈呈
京浜急行電鉄は、「京急夏詣キャンペーン2024」を開催している。キャンペーン参加20神社で御朱印を受けた人に、オリジナルのはさみ紙やグッズをプレゼント。