中小鉄道 相次ぐ値上げ 24年春 受益者負担避けられず
全国の中小鉄道事業者で2024年春、鉄道旅客運賃を改定する動きが顕著になってきた。コロナ禍はじめ少子化・高齢化の進展による収入減、働き方改革などによる移動形態の多様化など、鉄道事業を取り巻く経営環境は厳しさを増している。運行形態などの変更、運用効率化などのコストダウンに取り組む一方、鉄道施設面での維持管理も輸送の安全・安定を支える上では不可欠で、地域の公共交通機関として存続していくためにも受益者負担の増加は避けられないというのが実態のようだ。
利用者減少 維持費高騰
【芝山鉄道】 経営努力の限界に
「日本一短い鉄道」を自認する千葉県の芝山鉄道は3月16日、02年10月以来となる運賃改定を実施する。平均改定率は10・0%。普通運賃と通勤定期を軸に初乗り運賃を大人200円から220円、子ども100円を110円にそれぞれ変更する。
輸送人員は08年度以降減少傾向が続いており、23年3月期決算の最終損失は7443万円で赤字額は前期の4885万円から膨らんだ。運賃改定は「新型コロナウイルス感染症の影響による輸送人員の大幅減、昨年からのエネルギー価格の高騰に伴う動力費などの増大により経営努力の限界にある」というのが理由で、新たに得られた収入は老朽化した鉄道施設・設備等の更新投資に充てるという。
【流鉄】 慢性的な赤字体質
同じ千葉県の流鉄は4月1日に運賃改定する。1989年10月以来、約35年ぶり。首都圏新都市鉄道つくばエクスプレス線や他社路線バスの開業などの影響を長年受けており、旅客数は開業前の2004年度から49%減少(22年度比)、鉄道事業は慢性的な赤字体質が続いている。
老朽化する施設、車両などの維持費用には不動産事業などによる内部援助で賄ってきたが、それも限界で、現行運賃水準での鉄道運行の維持は困難であると判断した。改定率は定期外9・743%、定期10・058%(通勤10・044%、通学10・144%)、初乗り運賃は130円から140円に変更する。23年3月期の最終損失は前期の682万円から2364万円に悪化している。
【えちぜん鉄道】 新幹線の延伸が鍵
北陸のローカル線・えちぜん鉄道の運賃改定は3月16日で、03年開業以来の実施となる。動力費(電気料)や資材価格の高騰などに対応し、安定的な経営を行うのが目的だ。普通運賃、通勤定期に加えて通学定期も改定。通学定期の改定率は通勤定期の約2分の1に抑制した。平均改定率は10・3%で、普通運賃の初乗り運賃は160円から180円、距離に応じて20~50円の値上げを行う(特定区間は調整)。企画乗車券の価格も改定する。
北陸エリアでは3月16日の北陸新幹線金沢―敦賀間延伸開業でさらなる旅客流動が期待されるが、それでも運賃改定に踏み切らざるを得ない状況で、観光客のさらなる集客増が収益改善の鍵を握る。23年3月期の最終損益は前期の5800万円の黒字から7000万円の赤字に転落している。
【舞浜リゾートライン】 人気パーク鉄道も
運賃改定は少子化・過疎化が進展する地方だけの話ではない。観光地として多くの人出を集める千葉県の東京ディズニーリゾートでも、パーク内での旅客輸送を担う舞浜リゾートラインが3月に実施する。平均改定率12・4%。このうち、普通運賃は大人260円から300円(改定率15・4%)に改定するが、同社では「消費税率の引き上げに伴う旅客運賃の改正を除き07年4月以来、現行の運賃水準を維持してきた」と理由を説明する。
電気料金改定に伴う動力費の増加、工事・修繕資材、労務単価などが年々上昇する中、既存設備の償却費や維持管理費に加え、安全対策基準に適合する駅舎の大規模修繕、変電所設備や出改札システム更新への投資に充当する。列車内・駅構内防犯対策にも運賃改定分を活用していくとした。
23年3月期の鉄道事業売上高は、51億円で前期の31億円からは増収、最終損益は前期の18億円の赤字から9億円の黒字に転換している。なお、東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドの23年3月期決算は売上高4831億円(前期比75・2%増)、営業利益1111億円(1338・0%増)、経常利益1117億円(891・2%増)、最終利益807億円(900・7%増)の大幅な増収増益となっている。
各地で続々と
来春の運賃改定は、豊橋鉄道(3月16日)、智頭急行(特急料金のみ、3月16日)、福井鉄道(3月16日)、伊豆箱根鉄道大雄山線(同)、黒部峡谷鉄道(4月1日)、遠州鉄道(同)と北陸新幹線延伸開業絡みでIRいしかわ鉄道(3月16日)も実施する。
運賃改定の動きは今年春以降、大手民鉄事業者でもあったが、大手は「鉄道駅バリアフリー料金制度」などを理由とした運賃改定が多く、利用者減少などに悩む地方とは趣旨がやや異なっている。
検索キーワード:決算
321件見つかりました。
201〜220件を表示
-
-
-
-
2023.08.18 JR共通(グループ) 決算・財務
JRグループ上場4社 24年3月期第1四半期決算まとめ 鉄道運輸収入コロナ禍前の9割に
JR東日本、JR東海、JR西日本、JR九州の上場4社の2024年3月期第1四半期決算がまとまった。
-
2023.08.16 その他業種分類 記録・調査・統計
ウイークリー・メモ 23年8月7~13日
◇8月7日(月)=JR東海が東海道新幹線の駅構内に設置している個室型ワークスペース「EXPRESS WORK―Booth」について、利用が好調な「のぞみ」停車
-
2023.08.15 民鉄・公営・三セク 決算・財務
24年3月期第1四半期決算 近鉄グループホールディングス
【近鉄グループホールディングス】 連結売上高3995億4500万円(前年同期比113・4%増)、営業利益220億1100万円(248・4%増)、経常利益193
-
2023.08.15 民鉄・公営・三セク 決算・財務
24年3月期第1四半期決算 西日本鉄道
【西日本鉄道】 連結売上高968億1600万円(前年同期比19・3%減)、営業利益54億1100万円(1・1%減)、経常利益69億5000万円(14・2%増)
-
2023.08.15 その他業種分類 記録・調査・統計
月間日誌 23年7月
【国土交通省関係】 国土交通省が三大都市圏主要区間の平均混雑率(令和4年度実績)を公表=平均混雑率は東京圏123%、大阪圏109%、名古屋圏118%となり、東
-
-
2023.08.14 民鉄・公営・三セク 決算・財務
24年3月期第1四半期決算 東急
【東急】 連結売上高2392億5900万円(前年同期比14・4%増)、営業利益245億1800万円(179・5%増)、経常利益276億7600万円(169・4
-
2023.08.14 民鉄・公営・三セク 決算・財務
24年3月期第1四半期決算 名古屋鉄道
【名古屋鉄道】 連結売上高1409億7700万円(前年同期比12・6%増)、営業利益77億6000万円(84・1%増)、経常利益91億3500万円(72・2%
-
2023.08.14 小売・流通・物流・通運・自動車 決算・財務
24年3月期第1四半期決算 日本石油輸送
【日本石油輸送】 連結売上高78億7600万円(前年同期比2・7%減)、営業損失680万円(前期は1億1300万円の黒字)、経常利益5800万円(74・3%減
-
2023.08.10 民鉄・公営・三セク 決算・財務
24年3月期第1四半期決算 京浜急行電鉄
【京浜急行電鉄】 連結売上高620億4100万円(前年同期比4・2%増)、営業利益55億500万円(185・0%増)、経常利益54億800万円(210・2%増
-
2023.08.10 民鉄・公営・三セク 決算・財務
24年3月期第1四半期決算 京阪ホールディングス
【京阪ホールディングス】 連結売上高654億2300万円(前年同期比2・2%増)、営業利益90億6000万円(44・9%増)、経常利益89億8900万円(33
-