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日本鉄道サイバネティクス協議会 創立60周年記念式典 新会長に細川氏

2023.06.01
会場の一画では出改札システムの展示会も行われ、協議会活動の一部が紹介された

 新時代へのさらなる飛躍を

 日本鉄道サイバネティクス協議会(鉄道事業者など287団体)は5月26日、2023年度定時総会と創立60周年記念式典を東京・池袋のホテルメトロポリタンで開催した。総会では2017年6月から協議会運営のかじ取り役を務めてきた椎橋章夫会長の退任を承認、新しい会長にJR東日本情報システム取締役会長の細川明良氏を選出した。

 総会では、このほか22年度事業報告・決算報告、23年度事業計画・収支予算案なども承認した。

 総会後の祝賀会で細川新会長は、「(コロナ禍を経て)この3年間で通信技術、AI技術はすさまじい勢いで発展した。今、チャットGPTなどといったこれまでならコンピューター技術分野でしか語られなかった言葉が使われるようになるなど、世の中は大きく激変している。60年前に今日のような世の中を予見するように協議会組織を立ち上げたのは先人たちの先見の明にほかならない。その先人たちに恥じないように今を生きる私たちが、このサイバネティクス技術を使って新たなサービスを創造するとともに、『人』を原点とした活動を続けていきたい」とあいさつ。

 来賓の林康雄日本鉄道技術協会会長は、「この間、日本においての情報通信技術をリードしてきた。今、日本ではどの分野でもDX、ICTに関する取り組みが進められているが、しっかりとした組織として今日まで活動してきたのがサイバネティクス協議会。新しい日本の鉄道、モビリティーづくりに協議会が少しでも貢献していってほしい」と述べた。

 日本鉄道技術協会の特定部会の日本鉄道サイバネティクス協議会は、サイバネティクス技術の利用開発に伴う鉄道を中心とした交通・通信全般の進歩・発展に寄与すること――などを目的に1963年4月22日に設立。現在、「シンポジウム委員会」「調査研究委員会」「出改札システム委員会」「会誌編集委員会」「交通系データ活用委員会」の五つの委員会を設置して、各委員会(会誌編集委員会を除く)には専門部会、分科会を置き、業種業態の垣根を越えたさまざまな活動に取り組んでいる。同日の記念式典では、各委員会の直近10年間の歩みなどについても紹介。JRグループ各社、出改札機製造メーカーなどが参加した出改札システムの展示会は来場者の関心を集めた。

 式典後半には、東京大学モビリティ・イノベーション連携研究機構長で生産技術研究所教授の須田義大氏による特別記念講演(テーマ・将来の鉄道が目指すべき方向について)も行われた。式典終了後の祝賀会では鉄道、電機部門の関係者から協議会への期待が寄せられた。

 式典では「技術賞」「特別功労賞(顕著功績者)」「永年貢献者」「60周年永年貢献者」「論文賞」「60周年記念懸賞論文」の各表彰式もあった。各賞は次の通り(敬称略)。

 【技術賞表彰】

 ◇最優秀賞

 「地域連携ICカードの開発」(JR東日本・平井辰徳、矢口僚人、ソニー・中津留勉、王玉虎、JR東日本メカトロニクス・滝山直樹、新井広伸)

 ◇優秀賞

 「東海道新幹線地震防災システムの機能強化」(JR東海・淵上洋輔、太田光、松岡亮介、児玉聡、新海英昌、下鳥桂)▽「リアタイム経路検索」(JR東日本・川島宏一郎、坂入整、三田哲也、松本貴之、伊藤健一、山口智丈)▽「座席濡れ検知装置」(JR東海・中園琢巳、新幹線メンテナンス東海・小室栄一郎、サーモットプロジェクトチーム)

 ◇特別賞

 「着氷霜害に伴うパンタグラフ確認のAI化」(JR西日本・西田太郎、小倉圭祐〈JR西日本新幹線テクノス出向中〉、小崎大空、日立製作所・大平規史、鈴木尚宏、水谷有里)▽「送信機共用予備方式を導入した新幹線ATC地上装置の開発と実用化」(JR東海・波多野秀憲、乾賢一、宮川健太郎)

 【特別功労賞(顕著功績者)】

 ◇特別功労賞(調査研究報告会の設置による分科会活動の活性化に貢献)

 川﨑邦弘(鉄道総研)、土屋隆司(元鉄道総研)、大泉正一(JR東日本テクノサービス)、浦壁俊光(大同信号)、下垣弘行(元共同印刷)、滝口祐美(共同印刷)

 ◇特別功労賞(ICデータ活用説明会の開催による委員会活動の活性化に貢献)

 浦野直樹(JR東日本メカトロニクス)、小野由樹子(JR東日本)、細川良久(京王電鉄)、髙井勇輔(名古屋鉄道)、宮崎祐丞(JR西日本)、白子惣一(JR東日本メカトロニクス)、伊藤篤志(東急電鉄)

 【永年貢献者】

 池田孝行(JRシステム)、矢澤史郎(東急電鉄)、岡山千裕(川崎車両)、中野信明(オムロンソーシアルソリューションズ)

 【60周年永年貢献者】

 松本寿也(阪急電鉄)、木村尚史(三菱電機)、留岡正男(地下鉄メインテナンス)

 【論文賞】

 ◇シンポジウム論文部門・優秀賞

 「QRコードを活用したデジタルきっぷサービスの提供」(近畿日本鉄道・中村活裕、高橋悠也、中島実佐子、オムロンソーシアルソリューションズ・松井雅宏、山原誠、オムロンソフトウェア・木原剛)▽「運行状況確認システム(TRACS)の開発」(JR九州・松尾峻志、押方靖英、後藤田直起、飛田憲吾、原田稔、利光純一)▽「同期リラクタンスモータシステムの開発―世界初の営業車両への適用による省エネ効果の実証―」(東京地下鉄・友松白英、高橋達郎、齋藤拓也、三菱電機・金子健太、寺本晃大、山下良範)▽「3D画像解析踏切監視システム導入実証―3Dステレオカメラを用いた踏切安全対策の実現に向けた実証実験―」(西武鉄道・萩倉保宏、村田崇、齊藤善陽、コンピュータシステム研究所・中山和、森崎稔史)

 ◇シンポジウム論文部門・優良賞

 「アシストマルス AIを活用したきっぷ販売機能の開発―『話せる券売機』バーチャル駅員との会話によるきっぷの購入―」(JRシステム・酒井祐樹、宮崎謙太郎、佐々木幸太、生田目裕一)▽「車両側面カメラを用いた人物検知機能の開発―画像によるお客さまの車両への接近を検知するシステム―」(JR東日本・尾﨑隼人、中村信彦)▽「画像認識による旅客接近検知装置―実用化にむけた検証―」(JR東日本・安藤良太、朝日隆裕、榎原俊太、武田祐一)▽「ミリ波方式新幹線列車無線の開発―リフレクタによるミリ波方式列車無線の通信エリア拡大―」(JR東海・白井大貴、松村善洋、丹下智之 、木村仁、笹木栄志、藤井一樹)

 ◇会誌技術情報部門・優秀賞

 「AIオンデマンドバス実用化に向けた実証実験の取り組み―『大阪ならではの都市型MaaS構築』に向けて―」(大阪市高速電気軌道・岡田泰地)▽「3次元点群データ活用に向けた地理情報との連携道路技術を応用した『鉄道版インフラドクター』の導入」(東急電鉄・白田英明、髙橋俊秀、岩瀬祐人、小杉剛史)

 ◇会誌技術情報部門・優良賞

 「東海道新幹線におけるミリ波方式列車無線の開発」(JR東海・松村善洋、西山武志)▽「ローカル5Gを活用した鉄道駅における線路巡視業務・運転支援業務の高度化」(東急電鉄・佐々木健之)

 【60周年記念懸賞論文】

 ◇最優秀賞

  「サイバネティクスによる鉄道システムの最適化」(東芝インフラシステムズ・藤原裕二)

 ◇優秀賞

 「サスティナブルな社会における鉄道防災の将来像」(JR東海・大木基裕、水谷真基)▽「サスティナブルな社会における貨物鉄道と、貨物鉄道のサスティナビリティの向上のための提案」(東京大学大学院工学系研究科電気系工学専攻・三好正太)

 ◇佳作

 「サステナブルな社会の移動を支える公共交通機関がサステナブルになるために―サイバネティクスで全国の公共交通機関がONE TEAMになろう―」(JR西日本テクシア・加川裕治郎)▽「動画・画像解析による制輪子の厚さ測定に関する研究」(JR東日本・石井匠)▽「原点回帰から考える鉄道をはじめとする公共交通の継続的発展」(スルッとKANSAI・西野智久)

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