JR西日本 社会課題解決の取り組みで成果 アウトバウンド型オープンイノベーション
グループの技術、ノウハウで最適なソリューション提案
JR西日本グループの持つ技術やノウハウを生かして社会課題の解決を図る「アウトバウンド型オープンイノベーション」の取り組みが成果を上げている。東洋紡(大阪市北区)の関連会社では、不織布の製造現場に車両の屋根上機器を検査する画像解析AI(人工知能)を応用した「AI検品ソリューション」を導入。北海道日本ハムファイターズの新球場「エスコンフィールド」(北海道北広島市)では、ビーコンを活用した清掃係員の動線の可視化・分析や、屋根開閉時の来場者の安全確認など、最適なソリューションを提案して課題解決を目指している。
同社グループでは、これまでのイノベーション活動で築き上げてきた技術、ノウハウを活用し、鉄道という枠を超えて、世の中の課題解決を果たしていくアウトバウンド型のイノベーションを推進しており、社員がさまざまな企業を訪れ、課題などを聞いている。
■車両基地で活用AI応用し検品 東洋紡エムシー
今回の「AI検品ソリューション」は、東洋紡の製品の一つである不織布の表面の傷やごみなどの検品工程のために導入された。同検査は、これまで主に目視で行われ、多大な労力や時間を要していることや、検品精度を向上させることが課題になっていたという。
ベースとなっているのは、JR西日本の一部車両基地で活用している「車両屋根上検査AI」。車両所入り口に設置したカメラ映像で、車両屋根上機器の異常を検出するもので、これを応用。実証実験の結果、目視検査数を90%減らし、年間約1000時間の作業時間削減を見込めたため、10月から東洋紡のグループ会社・東洋紡エムシーの岩国サイトで本採用となった。
システム導入に当たっては、AIによる検品精度向上に必要なデータ蓄積機能や、再学習機能を付与することで、ユーザーが容易にAIモデルの修正を行うことができる仕組みとした。
同ソリューションは、東洋紡、グループ会社での他の生産ラインへの水平展開も検討されている。同種製品を製造している他企業への紹介も開始した。
■清掃係員の動線可視化実証実験 日本ハム新球場
一方、北海道日本ハムの新球場を保有・運営するファイターズスポーツ&エンターテイメント(北広島市)と連携した取り組みでは、ビーコンを活用して、野球場内の「清掃係員の動線の可視化」をテーマにした実証実験が行われている。
ビークルー(東京都目黒区)と開発を進めてきたビーコンとその電波を受信するスマートフォンアプリの組み合わせにより、その接触データを蓄積・可視化するシステムを適用した。
球場内では、ごみの管理や、床が汚れたらきれいにするといった美観維持の作業が重要となるが、実証実験では球場内の各所のごみ箱にビーコンを設置し、受信アプリを起動したスマホを携帯した清掃係員が、どのような動きをしているのか把握した。結果は良好で、引き続き動線分析による清掃オペレーションの改善に向けた検討を進めていく方針だ。
また、同球場では、可動式屋根の開閉時のさらなる来場者の安全確保、業務効率化を図るため、JR西日本が保有する画像解析AI技術の「エリア立ち入り検知」の活用も検討されている。
屋根可動部周辺エリアに滞在する人の有無を検出し、必要に応じて緊急停止を促すシステムの確立を目指す。今後、現地にAIを搭載したカメラを設置し、検証を実施する予定。
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