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北陸新幹線金沢―敦賀間延伸開業 福井周遊に新たな二次交通

2024.03.15
開業間近の越前たけふ駅前に停車する「はぴバス」。半日でも福井の魅力を堪能できる新たなツールだ

 県内交通5社連携 点在する観光地結ぶ

 あすから運行開始 新幹線駅の発着中心に

 北陸新幹線福井―敦賀間開業に向け、福井県内で新たな二次交通が整備された。県内の京福バス、ケイカン交通、大野観光自動車、福井鉄道、敦賀海陸運輸の5社が連携し、「はぴバスコンソーシアム」を設立。点在する観光地を結び、新たな誘客を図ろうと競合各社がタッグを組み、万全な受け入れ態勢を整えた。あすの延伸開業を迎える福井に一足早く訪ね、担当者に話を聞いた。(大石 淳記者)

 

 コンソーシアムは5社に福井県バス協会が加わり、福井県観光連盟が協力。「はぴバス」と銘打ったブランドを新設し、あす16日から運行開始する。

 福井駅東口を出発する2コース、芦原温泉駅発の1コースの計3コースを定期観光バスとして土曜日・休日に走らせるほか、募集型企画ツアーを随時催行。定観バスは京福バスが主催、募集型は京福バス、敦賀海陸運輸、大野観光自動車、福井鉄道がそれぞれ独自コースを運行する。

 

 福井鉄道の企画バスツアーに参加!

 紙すき見学と神社・寺巡り

 福井鉄道が企画した「和紙の里・製紙所見学と府中御堂拝観」は延伸区間の新駅の一つ、「越前たけふ」発のコースだ。所要時間は約6時間。地元伝統産業である「和紙作り」の現場や点在する神社・寺を巡り、名物の越前そばを堪能できる。

 福井県越前市の「越前和紙の里・卯立(うだつ)の工芸館」で、紙すきの実演などを間近に。紙の神様「川上御前」がまつられている岡太神社・大瀧神社を地元のボランティアガイド付きで、陽願寺を住職の案内を受けながら見学する。

 

 ■インタビュー

 互いに協力、多くのコースでおもてなし

 京福バス 吉住愛さん

 福井県観光連盟観光アクティビティ・スーパーバイザー 松尾章子さん

 コンソーシアムで中心的な役割を担う京福バスの吉住愛さんは、「福井の交通事業者では新幹線の延伸開業に向け、観光客の皆さんをおもてなししたいという気持ちが強かったのですが、一事業者では多くのコースをご用意することが難しく、福井県観光連盟のサポートのもとコンソーシアムを組みました」と経緯を話す。

 

  ――新たなブランド「はぴバス」の立ち上げ経緯を教えてください。

 吉住 延伸開業で多くの観光客の来訪が見込まれます。地元の交通事業者では観光客の方をしっかりとおもてなししたいと考えていましたが、ドライバー不足もあり、一事業者だけでは多くのコースをラインアップすることが難しく、互いに協力しようと立ち上がりました。観光連盟さまにサポートいただき、福井県バス協会を通じて参画事業者を募り、まずは5社が集まりました。

 松尾 バス路線は、どこも赤字で当初は厳しいという意見もありましたが、(延伸開業は)100年に1度のチャンスという声がたくさんありました。多くの方に満足していただけるツアーを作りたい、という吉住さんの熱意もあり、「これは協力するしかないない(笑)」と支援させていただきました。

 観光資源の発掘が業務の一環ですが、(福井は)資源が点在しています。新たなコンテンツ開発も大切ですが、まずは魅力ある観光地を線で結んでいきたいと考えていたので、(はぴバスは)ピッタリの施策でした。

 ――具体的に、どのように進めてきましたか。

 吉住 コロナ禍で新たに開発した県民向けのツアーで得たノウハウを生かしつつ、バスツアーで高い実績をお持ちの「はとバス」さんにご指導いただき、コース作りを始めました。

 ツアーの内容から組み方までレクチャーを受けました。トップガイドの方に講演いただき、おもてなしの心を学びました。ドライバーもさることながらガイド不足の中、連盟さんを通じて人材を募り、運行に備え研修を積んできました。

 松尾 補助金を活用して育成してきましたが、同時に「はぴバス」を県外に周知していかなければなりません。旅行会社の商談会などに参加しながら、新たに自社(コンソーシアム)での予約システムを開発しました。

 旅行会社のお力添えは不可欠ながら、コンソーシアムでも電話応対といったアナログ対応から脱却。福井に到着したら、個人で(はぴバスを)ご予約できるようになっています。

 ――福井の魅力とは。また、ロゴについて教えてください。

 吉住 なんといっても海、山を共に備えた自然ですが、他にもまだまだ知られていない魅力がたくさんあります。

 ロゴの右上には持続的な観光を示す無限大をあしらい、福井の「ふ」の文字を斜めに、少し欠ける形でデザインしています。

 斜めの角度は17度。県が17市町で構成されていることになぞらえています。一部が欠けているのには、まだ知られていない魅力があるという意味を込めました。色調は明るいピンク。ハッピーな気持ちを、バスの文字の水色は日本海を表しています。

 ツアー内容が決まるまで本当に苦労しましたが、楽しんでいただきたいという一心で取り組みました。福井にいらしたら、ぜひ「はぴバス」に乗り、ピンク色に染まって(ハッピーな気持ちに包まれて)いただきたいですね。

 ■福井へ誘客

 県観光連盟など特別シンポ開催

 県観光連盟では、日本旅行、JR西日本、福井県とともに「北陸新幹線福井県誘客プロジェクト実行委員会」を設立。23、24日に福井市内で「サステナブル・ブランド国際会議2024 福井シンポジウム~高校生が考えるこれからの観光~」を開催する。

 毎年実施しているシンポとは別に、北陸新幹線開業記念特別イベントとして企画した。2月に東京で開いたサステナブル・ブランド国際会議 Student Ambassador 全国大会」に出場した全国14校の一部校に加え、地元の高校を招く。

 生徒ならではの感性と視点で地域の課題解決などを提言。互いに意見を交わしながら、延伸開業を契機とした「福井で学べる次世代修学旅行」などについて考える。県全域を対象に、生徒が企画したエクスカーションも計画。継続的に訪れてもらうだけでなく、新たな教育旅行の場とする取り組みとして期待されている。

 県観光連盟では旅行会社をはじめ、各方面への周知に努め、補助金を活用したガイド育成に力を注ぐとともに、「新しい予約システム」(松尾氏)を構築。今年初めには公式ウェブサイト、旅行会社を通じた販売も開始したが、地震の影響で伸び悩んでいるという。

 

 応援割にも期待

 「16日から始まる『北陸応援割』に期待したい」(関係者)との声も。延伸開業を契機に「はぴバス」だけでなく、多くの誘客策が展開される福井。官民を挙げ、観光振興を推進していく。

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