交通新聞社 電子版

特集 ジェイアールセントラルビル 「JRゲートタワー」 名古屋の都市機能果たして5年

2022.04.25
名古屋駅に直結する「JRゲートタワー」(ジェイアールセントラルビル提供)

 「駅直結」で多様さ演出

 2017年4月17日に全面開業したJR名古屋駅直結の超高層複合ビル「JRゲートタワー」。1999年開業の「JRセントラルタワーズ」と接続し、名古屋のランドマークの一角を形成する。高層階を占めるオフィスや駅周辺地区の多様なワーキングスタイルに対応。タワーズと一体になって、中部経済圏の中心を成す名古屋の玄関口として都市機能を発揮してきた。両ビルを運営するのは、JR東海グループのジェイアールセントラルビル。同社の坪内良人社長のインタビューを交えながら、5年間を通じたゲートタワーの役割を見つめた。(栗原 康弘記者)

 JRゲートタワーは、高さ約220㍍、地上46階・地下6階建てで、延べ床面積は約26万平方㍍。直結するJRセントラルタワーズに引けを取らない規模と機能で、両ビルが一体となって魅力的な都市空間を提供してきた。

 主なフロアは1階の市バスターミナル、地下1階―地上11階の各商業施設、12~13階のレストラン街、15階と18~24階の「名古屋JRゲートタワーホテル」(ジェイアール東海ホテルズ運営)、26~44階のオフィスで構成。保育施設、貸会議室、フィットネスクラブ、クリニックといったオフィスワーカーをサポートする施設がそろう。多様なワーキングスタイルに対応するという開発コンセプトの一つを形にした。

 商業施設は、地下1階―地上8階を占め約150店舗が入るショッピングモール「タカシマヤ ゲートタワーモール(TGM)」(ジェイアール東海髙島屋運営)を核に、いずれも大規模な売り場の家電量販店「ビックカメラ」、衣料品店「ユニクロ」「ジーユー」を展開する。

 中でもTGMは、若年層をメインターゲットに据え、男女や商品カテゴリーをミックスしたライフスタイル提案型の売り場構成とした。これにより、タワーズのジェイアール名古屋タカシマヤとの高い回遊性を生かして、顧客層を拡大。名駅エリアのショッピングゾーンを確固たるものにした。

 巨大ツリーが街の風物詩に

 来館者は全面開業から9日間で100万人を超え、初年度は2850万人を記録。インバウンド消費も追い風になり勢いは衰えず、開業人気が一過性に終わることはなかった。

 開業年から1階エントランスのイベントスペースで毎年開催している巨大クリスマスツリーのイルミネーションは、今や街の風物詩となっている。名古屋地区最大級となる約12㍍のツリーの周辺や館内では、多彩な装飾やイベントでムードを演出。名古屋駅周辺地区にさらなるにぎわいを創出するというゲートタワーの役割を印象付けた。

 オフィスフロア40社が入居

 オフィスフロアは、金融、商社、電機、IT、食品といった企業など約40社が入居。コロナ禍やテレワークの進展にあっても空室率は低い。名古屋駅直結という抜群のアクセスは、大きなアドバンテージに違いない。

 オフィススペースのフレキシブルなレイアウト、省エネを図ったLED照明や複層窓ガラス、高セキュリティーの監視体制など機能的で快適なオフィス空間を提供。電力供給をはじめ災害に備えた構造・設備で、中部地方の拠点機能を置く入居企業のBCP(事業継続計画)を強力にサポートしていることも優位性を高めている。

 建設が進むリニア中央新幹線の名古屋駅は、ゲートタワーの直下にできる。その名の通り、名古屋の玄関口としてますますの発展が期待される。

 ■ジェイアールセントラルビル社長 坪内良人氏に聞く

 開業人気の定着が命題

 コロナ収束後は再びにぎわいを

――開業5周年を迎えた心境は。

 坪内 ゲートタワーの開業は、JR東海グループにとって大きなエポックで、開業人気は相当なものでした。直近2年間はコロナ禍の影響を受けながらも、全体としては順調にご利用いただいています。お客さま、地元の皆さま、広域からお越しの方々にも定着していき、ご利用に感謝の気持ちでいっぱいです。テナント各社の頑張りにも大変感謝しています。

――5年間で果たしてきた役割は。

 坪内 オフィスワーカーに向けて、いろいろな機能を組み込み、魅力付けしてきました。ホテルや商業施設では、開業時の人気を定着したにぎわいにしていくことが命題でした。インバウンドのお客さまへの対応をはじめ、電子マネーに対応した販売体制の構築などさまざまなシステム化を進めました。いずれも前向きな施策でそれが功を奏してきた成長過程にある前半の3年間でした。

 そうした中でコロナ禍に見舞われます。いろいろな事業に陰りをもたらし対応に追われ、防戦に努める側面が非常に濃かったのが後半の2年間です。収入の伸び悩みはありますが、逆に難局を乗り切るためにテナント各社、オフィス入居企業の方々と話し合いながら、連携や絆を深めました。5年間をおしなべていえば、着実に成長を続けることができていると思います。

――今後の運営方針は。

 坪内 コロナ収束後は、テナントの皆さんと一緒に盛り上げ、にぎわいをもう一度作り直して、たくさん来ていただけるビルにしていきたいと考えています。

 特に地域密着の取り組みに力を入れ、中でも若い人に参画していただける企画を打ち出していきます。これまでも愛知県内の農業高校生徒が作った花の装飾や農産物の即売会を行ったり、クリスマスイベントで高校生の聖歌隊やオーケストラ部に参加いただいたりしています。最近では、東海道新幹線「のぞみ」30周年を記念して、近隣の幼稚園児が希望や夢をテーマに描いた絵を館内展示しました。若い皆さまに館内で思い出を作っていただくことで、ゲートタワーに親しみを持ってほしいと感じています。

 オフィスについては、大きく変わりつつある働き方に合った格好で魅力を高めていこうと、1フロア全てを使ったシェアオフィスの設置を勉強しています。

(K)

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