交通新聞社 電子版

JR貨物 メディカル鉄道コンテナサービスを推進

2024.03.14
メディカル鉄道コンテナサービスの利用拡大に努める五島部長(左端)とコーディネートチームのメンバー

 医療・医薬品輸送の利用拡大

 事業者らと連携パッケージ化 最適な解決法提案

 モーダルシフト加速

 JR貨物が、医薬品や医療器具などを鉄道コンテナで輸送する「メディカル鉄道コンテナサービス」の利用拡大に力を入れている。鉄道ロジスティクス本部総合物流部に設けた「コーディネートチーム」が、同社、コンテナ所有者、利用運送事業者の3者間連携でパッケージ化した最適なソリューションを提案。荷役作業を工夫し、保冷コンテナなど製品の品質保持に適した各種コンテナを手配することで、高度な輸送品質を確保する。優れた環境性など鉄道のメリットをアピールし、モーダルシフトの加速を図る。

 メディカル製品の鉄道コンテナ輸送は、栄養剤などを除き、輸送品質確保の点から難しかった。近年、医薬品卸事業者や医薬品メーカーは環境への配慮から、二酸化炭素(CO2)排出量削減やトラ ックドライバーの働き方改革など、物流面の取り組みを進めている。

2社の医薬品  鉄道輸送

 現在、JR貨物は医薬品卸、医薬品メーカーの2社の医薬品輸送を担う。

 同社は2019年ごろから医薬品卸のメディセオ(東京都中央区)と医薬品の鉄道輸送に向けて情報交換を実施。トライアルを経て21年1月、メディセオの物流センター「埼玉ALC」(埼玉県三郷市)から「東北ALC」(岩手県花巻市)へ輸送する製品の一部について、常磐線隅田川―東北線盛岡貨物ターミナル間で鉄道の定期輸送をスタートした。

 日本石油輸送の12㌳保冷コンテナ「スーパーUR」を使用し、毎週月―金曜日に各日1個を輸送。昨年1月には「西日本物流センター」(兵庫県加東市)向けにも拡大。現在は「阪神ALC」(同県西宮市)向けに変更し、東海道線東京貨物ターミナル~吹田貨物ターミナル間でも輸送している。メディセオ専用のラッピングコンテナ5個をそろえ、モーダルシフト前に比べCO2排出量を70~90%程度削減できる見込みだ。

 昨年10月からは武田薬品工業(大阪市中央区)、三菱倉庫(東京都中央区)と、武田の国内特約店向け医療用医薬品輸送の一部モーダルシフトが実現した。武田製品の輸送を担う三菱倉庫メディカルチームとの情報交換が実った格好だ。

 東京と北東北地区間の一部の輸送で丸和通運の12㌳冷凍コンテナを使用し、隅田川―盛岡貨タ間で毎日コンテナ2個程度を鉄道で輸送する。CO2排出量は約60%削減できる見込み。今後はさらに輸送エリアや特約店の拡大を目指す。

ガイドライン準拠めざして

 医薬品などの輸送は、各社が振動対策や温度管理など品質管理のための適正流通(GDP)ガイドラインを定めている。ガイドラインに準拠した鉄道輸送を実施するため、配送先のバースで鉄道ダイヤに合わせたオペレーションを組むことによる荷役時間の確保や、列車の遅れ・運休時の連絡と代替トラックの輸送体制の構築といったBCP(事業継続計画)対策などの検討も進めている。

 温度帯管理に関しては、温度管理が可能なエンジン付きコンテナの使用や、製品を梱包(こんぽう)する保冷バッグなどの利用により、保冷の持続時間を48時間から72時間とした上で、コンテナ内部への断熱材の設置などで対応する。また、遅れなどに備えて在庫に余裕のある医薬品を輸送の対象とするなど、工夫と調整を重ねている。

 JR貨物と荷主の双方が対応策を積み重ね、荷主各社がガイドラインの求める輸送品質を確保できると判断した上で鉄道輸送が実現する。

 昨年12月に設置したコーディネートチームは、保冷、定温、防振など各種コンテナのリース・レンタルを手掛けるコンテナ所有者、利用運送事業者と連携。メディカル分野で鉄道利用の打診があった際は、最適な輸送スキームをパッケージとして提案する。12月に開催したウェブセミナーでも周知を図るなど、知名度アップに努めている。

 同部の五島洋次郎部長は「現在の輸送量は2社で月にコンテナ150~200個程度。まだ認知度は低いため、医薬品卸、医薬品・医療機器メーカー、物流会社のメディカルチームの〝3方面〟へ、鉄道輸送が可能であることを積極的に働き掛け、今後数年間で輸送量の倍増を目指したい」と目標を語る。

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