特集 JR東日本アイステイションズ 事業者ニーズに合わせソリューションを提供―埼玉新都市交通の場合
全国の鉄道事業者72社局の運行情報を公式・公認情報として提供しているJR東日本アイステイションズ(JIS)。全国で唯一、JR東日本から直接、運行情報を入手し、配信できる事業者として、JR東日本管内をはじめとする全国の鉄道事業者や、コンテンツプロバイダー、報道機関などにも運行情報を提供。同社が活躍する領域は幅広い。運行情報配信に特化したものから多言語に対応したものまで、鉄道事業者のニーズに合わせたシステムなども提供する同社のサービス導入事例を紹介する。(福原 潤記者)
情報配信業務受託
JISの「情報配信業務受託」は、運行情報や振替情報、遅延証明書といった各種情報データの入力などを担う。これにより、一刻も早い運転再開に向けた業務や、利用者から寄せられる問い合わせなど、鉄道事業者は各職域で、より優先すべき事柄に専念できているという。
同社が手掛ける配信情報件数は、年間11万件を超えている。運行情報の入手から配信までは平均してわずか2~3分。この速さを実現できているのは、各鉄道事業者によって異なる情報提供方法やニーズなどに対して、熟練のオペレーターたちが24時間365日、常に複数名の体制で対応できる配信センターを持つ同社ならではだ。
同サービス導入企業の埼玉新都市交通(ニューシャトル)の指令や駅業務などに携わる社員に、導入前に抱えていた業務上の課題や現在の状況などを語ってもらった。
鈴木氏 他社線の運行情報を提供
――ニューシャトルの皆さんが担当されている業務の概要を教えてください。
佐々木 ダイヤや運行計画などを策定する部署に所属しています。当社では、運行情報の配信と自社ホームページの全面刷新に向けて、2021年春ごろに本社企画部門と現業部門で横断チームを結成し、「ホームページリニューアルプロジェクト」を立ち上げました。私はそのリーダーとして、社外との契約交渉や社内調整などを行いました。輸送障害が発生した際には、指令員のサポートとして、運行情報の社内外への発信業務も行っています。
吉村 現在は運転管理所に所属し、運転業務に携わっています。ホームページリニューアルプロジェクト当時は、大宮駅営業係として、出札業務と改札業務を行っておりました。これとは別に本社内で同プロジェクトに参加し、ホームページの全面リニューアルに向けて、意見を出し合いました。
溝口 現在は運転管理所に所属しています。同プロジェクト当時は、駅に所属し、出改札やホームでのお客さま対応などを行っておりました。主にホームページリニューアルのコンセプトやデザインの刷新などのアイデアや、どのような改善点があるのかを私たちで考え、出していく業務に携わりました。
金岩 列車がダイヤに基づき、安全かつ円滑に運行できるように、運行管理などを担う総合指令所に所属しています。車両故障や列車遅延などが発生した場合に、各所への情報連絡やお客さまへの案内放送、駅のホーム上に設置されているインターホンからのお問い合わせ対応などを行っております。
――JISのお二人は、ニューシャトルへの自社サービス導入に際して、どのようなことを担われたのですか。
鈴木 ニューシャトルさまは、2017年に駅の発車案内表示器(大型サイネージ)のリプレースを行われました。このタイミングで、駅利用者さまに対して大宮駅で接続する他社線の運行情報を提供することになりました。私はその時に担当させていただきました。
その後、ホームページリニューアルを検討されているというお話の中で、情報発信の改善点や課題をお持ちだと伺いました。この課題に対しまして、当社の情報配信サービスのご提案を行い、ご契約のタイミングまで携わらせていただきました。
髙本 私はご契約をいただきました後、実運用の準備に携わりました。主に、実際の運行情報の配信を担う当社内のオペレーターの調整や、様式の策定、運用マニュアルの整備などでご協力させていただきました。
金岩氏 以前、情報更新に時間要す
――JISのサービス導入以前、輸送障害発生時など、異常時の対応はどのように行ってきたのでしょうか。
佐々木 輸送障害が発生すると、総合指令所で発生原因・遅延時分を確認し、指令員が社内の管理者層などの関係者へメールで知らせていました。これと並行して各駅の発車標を、総合指令所の指令員が手動操作で〝調整中〟に設定し、列車遅延情報を駅の利用者さまに周知していました。当社ホームページへの運行情報と遅延証明書の掲載は、本社の社員が再度指令に遅延事由ならびに最大遅延時分を確認した上で更新していました。しかし、休日や早朝夜間など、本社社員がいない時間帯は情報が更新されず、「平常運転」のままのこともありました。
金岩 以前は、輸送障害などが発生すると、関係者への輸送障害発生のメール作成、駅発車標の操作、お客さまへの案内放送、インターホン対応、運転整理を計2人の指令員で行っていました。本社社員不在の場合は、当社ホームページの運行情報欄への列車遅延の情報掲載も行うこともありました。
これらの業務が輻輳(ふくそう)した際には、運行情報の更新までに時間を要してしまい、お客さまからお叱りのご意見をいただいてしまうこともありました。
佐々木氏 定型文で表現ばらつきなし
――輸送障害発生時、一刻も早い運転再開に向けてやるべきことはたくさんありますよね。JISのサービス導入後の現在では、具体的にどのような体制になっていますか。
佐々木 輸送障害が発生すると、総合指令所で発生原因・遅延時分を確認し、指令員がJISにFAXを送信します。導入以前は、総合指令所で行っていたメール送信、発車標の操作と、運行情報の更新、遅延証明書の掲出が、FAX送信のみで行えるようになりました。定型文を活用することにより、担当者による文章の表現のばらつきがなくなりました。お客さまに的確で迅速な情報提供を行うことが出来るようになり、指令員の運転再開への対応もスムーズになりました。
――ニューシャトルは沿線住民の通勤・通学の足の担い手であると同時に、日々多くの鉄道ファンや家族連れらを大宮駅から鉄道博物館へとお連れしています。国内外から初めて訪れる方も少なくないことと思います。どのような情報発信を心がけていますか。
佐々木 すべてのお客さまによりわかりやすく、安心してご利用いただける案内を心がけております。運行情報は文案パターンが多数存在することから、事前に用意できず、外国語が母語の方への案内が課題でした。現在ホームページ上では、JISのサービスを活用することで、日本語で依頼しても速やかに多言語化していただいています。外国籍の方や遠方からお越しの方にも分かりやすく安心してご利用いただけていると思っております。
――改めて運行情報の発信と自社ホームページを刷新したことに対するお振り返りと今後の方針をお願いします。
佐々木 輸送障害の発生頻度が比較的少ない当社ですが、刷新前は、朝の通勤時間帯に列車遅延が発生した際の情報発信力に大きな課題がありました。お叱りのご意見をいただくこともありました。
しかし、JISのサービスを活用してからはそのようなご意見がほぼなくなりました。また、不定期な運行情報発信のために指令員を増員することはなかなか難しく悩んでおりましたが、これも解消するとともに、お客さま満足度も向上しています。本件に携わっていただいた皆さまのお力添えなしに、ホームページの刷新と運行情報発信の向上は実現しませんでした。改めて心より感謝申し上げます。今後もお客さまにとって価値ある情報を提供し、サービス向上に尽力してまいります。
スムーズな情報連携/業務負荷を改善 鈴木氏
ニューシャトルさまとは導入後も情報配信の振り返りを行い、都度運用改善を行ってまいりました。
ニューシャトルさまにはホームページリニューアルというタイミングに合わせて当社サービスをご導入頂きました。同じように、異常時における情報連携やお客さまへの情報発信などに課題やお悩みを抱えられている鉄道事業者さまはいらっしゃると思います。
当社では、長年の実績とノウハウを活かした配信業務の受託や鉄道分野に最適化された多言語配信など、鉄道事業者さまそれぞれの課題に応じたソリューションをご提案させて頂く事が出来ます。当社サービスをご利用頂くことにより、よりスムーズな情報連携や業務負荷の改善、また、お客さまへの情報提供の向上とさまざまな面で寄与できるのではないかと考えております。
運行情報配信を担う立場として、引き続き迅速かつ正確な情報配信に努めていくとともに、情報配信にかかわるパートナーとして頼られる存在であり続けたいと思います。
■埼玉新都市交通株式会社(愛称:ニューシャトル)会社概要
東北・上越両新幹線の建設に伴い、大宮市(現さいたま市)・上尾市・伊奈町の沿線地域住民の足として1983年(昭和58年)12月に開業した新交通システム「埼玉新都市交通伊奈線・ニューシャトル」を運行。通勤・通学や買い物客などの輸送に公共交通機関としての役割を果たすとともに、沿線地域発展の原動力となっている。今年12月22日に開業40周年を迎える。
現在、ニューシャトルでは全車両に開業40周年を記念したヘッドマークを掲出し運行し、地域の『魅力彩発見』すべく、さまざまな企画に取り組んでおり、開業40周年当日には、羽貫駅及び大宮駅で発車式が執り行われる。
■座談会(敬称略、肩書は当時のもの)
JR東日本アイステイションズ
営業部交通情報グループ 鈴木智茂 リーダー
同グループ 髙本祥太郎 主任
埼玉新都市交通
運輸・営業部運輸課 佐々木 暁裕 係長
総合指令所 金岩尭秀 指令
運転管理所 吉村優佳 運転士
運転管理所 溝口大地 運転士
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