元旦号 さらなる成長へ挑戦
コロナ禍、業務の在り方を根源から見直し
将来の姿 見え始める
AI、自動運転、DX人材の育成・・・
昨年5月に新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行して以降、国内の経済・社会活動はようやくコロナ禍の呪縛から解放された。感染防止への配慮は必要だが、飲食や対面での会合、リアルの旅行など、コロナ禍で我慢を強いられていた社会活動は徐々に再開され、夏場以降は急速に勢いを増した。訪日客は、円安の追い風もあり、既にコロナ禍前の水準を上回りつつある。
JR上場4社の2024年3月期第2四半期連結決算を見ると、4社とも各損益の黒字化を達成し、旅客運輸収入はおおむねコロナ禍前の9割程度まで回復した。定期収入など回復が遅れている分野もあるが、訪日客の増加や国内旅行復活の勢いを持続できれば、コロナ禍前の水準を超えることも視野に入ってきている。
3年余りに及んだコロナ禍がもたらしたものとは何だったのか。運輸・観光業界は前例がないほどの大打撃を被り、それだけにとどまらず、戦後初めて人口減少に転じた日本社会が、いずれ直面せざるを得なかった厳しい現実を、容赦のない形であぶり出し、眼前に突き付けたともいえよう。
社会が変容を迫られた結果、鉄道の定期券利用者数はコロナ禍前水準に遠く及ばず、地域交通は衰退に拍車が掛かり、存続自体が危ぶまれる事態に陥った。あらゆる業種で人手不足が顕在化し、エッセンシャルワーカーの確保すら困難になりつつある。
一方で、JR各社をはじめとする各鉄道事業者は、コロナ禍の克服と反転攻勢、「ポストコロナ」の時代に向けて、コスト構造の大胆な見直しや抜本的な経営改革、体質改善に全力で取り組んできた。これらの改革は、営業利益率の改善など成果として表れつつある。
今年の鉄道業界で最大の話題は、3月16日の北陸新幹線金沢―敦賀間の延伸開業だろう。新幹線が初めて福井県へ乗り入れ、東京―福井間の所要時間は現在より36分短縮されて最速2時間51分と3時間を切り、同―敦賀間は50分短縮の最速3時間8分で結ばれる。近畿・中京方面と北陸エリアの所要時間も短縮され、移動がさらに便利になる。
2015年3月の同新幹線長野―金沢間開業により、首都圏と北陸エリアの交流人口は大きく増加し、観光をはじめ各分野で多大な経済効果をもたらした。今回の延伸により、北陸エリアのさらなる活性化が期待される。10月からスタートする「北陸デスティネーションキャンペーン」も、延伸効果を後押しするに違いない。
さらに注目されるのは、3月にJR九州香椎線で開始される自動運転(GOA2・5)であろう。運転士以外の係員が前頭乗務するもので、ATS(自動列車停止装置)区間での自動運転は全国初の事例となる。ドライバレス運転は他の鉄道事業者でも実現に向けて取り組みを進めており、将来の人手不足や列車運転の革新に向けて、一昔前までは夢物語でしかなかったことが、もう現実になろうとしている。
全国各地のローカル線問題については、持続可能な交通体系の構築に向けた動きが進捗(しんちょく)することが予想される。昨年10月に施行された「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」(地域交通法)に基づき、JR西日本は芸備線備中神代―備後庄原間(68・5㌔)について、再構築協議会の設置を国土交通大臣に要請した。このほかの地域でも、公共交通の在り方を根本から考え、地域にとって本当に望ましい姿を導く機会になるだろう。
今年4月からトラック運転手の時間外労働(残業)の上限が年間960時間に規制される「物流2024年問題」も目前に迫った。時間外労働の規制強化は、物流だけでなく、一部の路線バスで縮小・廃止の動きが顕在化するなど、他の労働分野でも大きな課題となっている。トラックから鉄道へのモーダルシフト加速をはじめ、交通業界全体で対応していくことが求められる。
アフターコロナ、ポストコロナの時代にあって、鉄道業界が再び力強い成長軌道を描くためには何が必要なのか。コロナ禍で呻吟(しんぎん)した各社が、災いを克服して攻勢に転じるべく、全力を挙げてこの数年取り組んできた過程の中で、業界の将来の姿が見え始めてきた。
各業務への生成AI(人工知能)の導入や、列車・バスの自動運転、営業列車のデータ収集を活用したCBM(状態基準保全)によるメンテナンスの革新、各種作業の機械化、リスキリング(職業能力の再開発)によるDX(デジタルトランスフォーメーション)人材の育成など、革新的な技術を大胆に採り入れ、業務の在り方を根源から見直すことこそ、生産性の大幅な向上、構造改革の実現につながる。各社が果敢なチャレンジを続けていくことが、さらなる飛躍を実現する唯一の道であろう。
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2024.08.20 その他業種分類 記録・調査・統計
月間日誌 24年7月
【国土交通省関係】 国土交通省が鉄道・軌道における動力車操縦者運転免許の受験資格などについて、受験可能な年齢を18歳以上に引き下げる(1日) 国交省が北陸新幹
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2024.08.14 政府・省庁・鉄道運輸機構 コラム・企画類
ティータイム 中村広樹 国土交通省中部運輸局長
中部エリアを持続可能な地域に 7月1日付で就任。中部運輸局が掲げる五つのビジョンに触れ、「最も大事なのは交通環境の安全の確保。
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2024.08.07 その他業種分類 コラム・企画類
ティータイム 星野達哉 BOLDLY市場創成部部長
「当社は自動運転バスを『横に動くエレベーター』というコンセプトで考えている。お客さまが乗車して目的地を指定し発車ボタンを押すと、扉が閉まり発進する。
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2024.08.06 その他業種分類 予定・計画・施策
高崎経済大学 「関越交通のバス事業の概況と特徴・課題」の公開講演会
高崎経済大学(群馬県高崎市)は7月26日、同大学地域科学研究所主催による2024年度研究プロジェクト公開講演会を同大学図書館ホールで開いた。
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2024.07.25 その他業種分類 記録・調査・統計
ウイークリー・メモ 24年7月15~21日
◇7月15日(月) ◇16日(火)=JR東日本、JR東海、JR西日本と、北陸三県誘客促進連携協議会、北陸観光協会が観光キャンペーン「Japanese Beau
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2024.07.19 政府・省庁・鉄道運輸機構 予定・計画・施策
国交省 バスキャッシュレス化で秋以降に実証運行 利用者影響を考慮し10路線程度で
国土交通省は今秋以降に、バス事業者の経営改善・体力強化の一助となる「完全キャッシュレスバス」の実証運行を実施する。
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2024.07.10 JR東日本 予定・計画・施策
JR東日本 WaaS共創コンソーシアム活動状況 24年度は17テーマ推進
JR東日本は4日、「WaaS共創コンソーシアム」の活動状況について発表した。
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2024.07.08 政府・省庁・鉄道運輸機構 人事異動・組織変更
国土交通省人事 7月1日、2日、4日付
国土交通省 四国地方整備局建政部長(都市局参事官)井村久行▽都市局参事官(都市局公園緑地・景観課緑地環境室長)湯澤将憲▽大臣官房付・即日辞職・6月30日付・都
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2024.06.20 政府・省庁・鉄道運輸機構 予定・計画・施策
国交省 「2024年版交通政策白書」を公表
交通維持、自動運転など俯瞰 国土交通省は18日、2024年版交通政策白書(「令和5年度交通の動向」および「令和6年度交通施策」)を公表した。
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