交通新聞社 電子版

特集 JR東海 東海道新幹線品川駅 10月1日で開業20周年

2023.09.29
街の発展とともに飛躍し続ける東海道新幹線品川駅

 大動脈輸送の要 東京南西部アクセス向上 

 成田、羽田にも至便

 2003年10月1日、東海道新幹線に品川駅が開業した。同線にとって〝第2の開業〟とも呼ばれ、3大都市圏を結ぶ大動脈輸送の重要な転換点になった。今年で開業20周年を迎える、同線で〝17番目の一番新しい駅〟。「のぞみ」中心の抜本的なダイヤ編成が幕を開け、東京南西部とのアクセス向上や、駅周辺の街の発展に大きく貢献してきた。現在は、リニア中央新幹線の建設工事が着々と進み、始発駅となる将来のポテンシャルは計り知れない。JR東海新幹線鉄道事業本部の長西宣英駅長のインタビューを交え、同駅が果たす役割や現状を紹介する。(栗原 康弘記者)

 

 「のぞみ」中心ダイヤ開始

 品川駅を新設した背景には、伸び続ける東海道新幹線の輸送量に対応するという課題があった。輸送量は、JR東海が発足した1987年度を100とした場合、同駅開業前の2002年度までは125前後で推移。並行して車両と地上の両面で設備投資を積み重ね、輸送力増強の施策を進めてきた。

 これらが結実したのが03年10月1日。2面4線ホームを備える同駅の開業と同時に、全列車の最高速度を時速270㌔に引き上げ、「のぞみ」中心ダイヤがスタートした。1時間当たり片道最大3本だった「のぞみ」を7本とした上で、指定席特急料金を約1割値下げし、新たに自由席も設けて、利用しやすくした。

 輸送力増強さらに加速

 これを機に、東海道新幹線は新たな時代に入った。先述した輸送量の指数はさらに伸び、コロナ禍前の18年度には169に達した。その間、「のぞみ」中心ダイヤを段階的に拡大し続け、13年度には「のぞみ10本ダイヤ」を確立。運輸収入ベースでは、品川開業前の02年度から18年度の間に38%伸びた。

 そして20年3月、全列車の最高速度を285㌔化して「のぞみ12本ダイヤ」を実現。コロナ禍で大幅に利用が落ち込んだものの、収束とともに回復基調にある。今年8月10日には、1日の列車本数で過去最多を記録する471本を運転。約20年前の1日当たりの本数と比べると約200本増加している。

 駅社員「おもてなし」演出

 ホーム可動柵取り換え

 東海道新幹線の22年度の乗車人数を1日当たりで見ると、品川駅は約2万8000人。コロナ禍前の18年度は約3万7000人を数えた。当時は京都駅の約3万9000人に迫る勢いだった。

 現在は、東京、新大阪、名古屋、京都、新横浜に次いで6番目に多い。新横浜駅とはほぼ同数で、同新幹線では首都圏第3のターミナルとして機能を発揮している。

 品川開業は、東京南西部から同新幹線駅とのアクセスを飛躍的に向上させた。東京駅の場合に比べて、最大30分程度の時間短縮につながり、08年3月のダイヤ改正以降は、全列車が品川停車になった。

 アクセスの利便性でいえば、成田と羽田の両空港にそれぞれ直結する列車との乗り換えで、外国人利用者が多いのも特徴だ。

改札内コンコースのガラス壁面を生かしたN700S車両と季節の装飾。制作する駅社員がおもてなしの心で旅情を演出する

 品川駅は現在、駅開業当初から使用していた下り本線(24番線)のホーム可動柵を取り換える工事を実施している。利用者にホームでの注意喚起を促すため、改札付近に設置した大型ディスプレーの「駅専用案内システム(ESA)」を活用。表示する画像を駅独自で作成した。工事は12月ごろに完了する予定。

 開業20周年セレモニー

 多彩な催事で謝意

 10月1日は同社とJR東日本、京浜急行電鉄の品川駅長3人がそろい、開業20周年セレモニーを開く。加えて当日と11月にかけては、駅が中心となって企画した数々のイベントを開催し、感謝を表す。20周年を記念したロゴマークは、駅社員が作成。デザインは、駅周辺のレインボーブリッジと東京タワーを背景に、始発駅となる超電導リニアと東海道新幹線の車両を並べ、これまでの感謝とこれからの希望を込めた。

 リニア「始発駅」へ着々

 リニア中央新幹線の始発駅となる品川駅。その建設工事が鋭意進められている。

 東海道新幹線の直下では、同線の線路を支える仮設橋りょうに当たる工事桁の架設を16年9月に始め、今年2月に全123連を完了した。現在は東海道新幹線軌道下の掘削や、地中掘削用の連続壁の設置工事などを行っている。

 

 ■インタビユー

 JR東海新幹線鉄道事業本部品川駅長 長西宣英氏

 「安全」を最優先

 喜ばれるサービス追求

――20周年の節目を迎える心境は。

 長西 品川駅が開業する前は、この辺りに車両基地があり、新幹線運転士として研修や訓練で訪れたことがあります。そこに新駅ができると知ったときは感慨深いものがありました。当時や工事中の街の様子を知っているので、開業後の近代化には大きな進化を感じています。コロナ禍前までのお客さまのご利用を見ると着実に増えており、便利な駅として受け入れられたのではないでしょうか。

――駅の役割をどのように捉えていますか。

 長西 品川駅の開業は、アクセス面での利便性向上や輸送力増強の重要拠点として、東海道新幹線、さらには当社の発展にもつながる大きなプロジェクトでした。そして、駅周辺地域の発展とともに、ビジネスや観光の拠点としての役割を果たしています。

 特に、新幹線改札に近い東口に当たる港南口は、オフィスや商業施設が入る高層ビルが次々と建設され、訪れる方々が新幹線を利用される機会が増えたと考えています。駅として、地域の方々との連携はとても重要です。駅づくり、街づくりを一緒に取り組んでいく必要があると考えています。お客さまの避難誘導や災害時の帰宅困難者対策では、JR東日本、京急電鉄とともに行政の訓練に参加するなど協力しています。

――駅で力を入れていることは。

 長西 繰り返し伝えているのは「安全最優先」「安全輸送」です。明るく、元気良く、しっかりとした社員126名が、お客さまの安全を守ることを第一に、喜ばれるサービスを提供しようと日々頑張っています。安全行動を取るために、全社的に取り組んでいる「もっと安全!運動」を推進し、駅での勉強会や訓練を通じて、点で覚えたことを線で結び付けて理解することで仕事の本質を身に付けています。

 サービス面では、ESAを活用した駅独自の情報提供のほか、新幹線部門での「ブランドクオリティサービス運動」の展開によりスタイル、スキル、マインドを大切に取り組んでいます。

――いよいよ20周年イベントが開催されます。

 長西 20周年に向けて、お客さま、地域の皆さまに感謝やおもてなしの気持ちを持って接していこうと、駅社員がプロジェクトを結成しました。品川らしいロゴマークを作成したり、他系統を含む社内や地元、JR東日本、京急と調整して企画を考えたりして準備を進めてきましたので、楽しいものになると思います。

――品川駅の今後の展望は。

 長西 リニア中央新幹線の始発駅として新たな一歩を踏み出します。加えて、当社以外の鉄道や周辺地域での開発計画も進められており、品川駅はさらに大きく変わります。これからも、お客さまから「多くのありがとう」をいただける駅にしていきたいと思います。(K)

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