特集 四国鉄道機械 鉄道の安全、安定、快適輸送支える
確かな技術力、幅広い製品・サービス
確かな技術力に裏付けられた幅広い製品やサービスの提供で、四国はもとより全国の鉄道事業者の安全、安定、快適輸送を支えるのが、JR四国グループの四国鉄道機械(香川県多度津町)だ。前社名の「四国鉃機」から現社名に変わって今月でちょうど10周年。本社工場や機械事業部事務所棟の建て替えも終わり、さらなる飛躍を期している。この6月まで社長を務めた田中善一郎会長のインタビューとともに、同社を紹介する。(鈴木 宏治記者)
同社前身の四国鉃機は、1969年に太陽工業多度津出張所として発足し、後に改称した関西交通機械四国事業所と、同社から分離した関西工機整備多度津事業所が合併して88年に設立した。主要株主はJR四国とJR西日本テクノス。
主な事業部門は車両事業部と機械事業部があり、車両事業部は多度津事業所(JR四国多度津工場内)を主要拠点に、JR四国の車両の検査、修繕、改造などを担当。
機械事業部は主に本社工場を拠点に荷役装置、車両検修用設備、洗浄装置などの設計、製造販売、保守などを行い、設備部(高松市)ではJR四国の現場のあらゆる機械設備の保守管理を手掛けている。
発足の経緯から、機械関係の販路は西日本エリアが中心だったが、隔年開催の「鉄道技術展2011」「同2013」への出展を経て14年7月、さらなる展開を見据え、社業の分かりやすさを前面に打ち出した現社名に変更した。
近年は、本社工場建て替え(23年6月竣工)、機械事業部事務所棟建て替え(今年6月)などで、関西交通機械時代からあった本社敷地内の建物が全て刷新され、工場の生産性向上、社員の就業環境改善などが図られている。
検査、修繕、改造に心血注ぐ車両事業部
車両事業部の主な業務は、JR四国多度津工場に入場する車両の検査、修繕、改造など。作業はJR四国との分担で行われ、気動車の場合、入場直後の状態検査、機関(エンジン)や台車の取り外し、出場前の取り付け、確認などはJR四国が実施。各部品の分解、修繕、整備は四国鉄道機械が行っている。
改造はこれまで、121系電車の7200系化(15~18年)、観光列車「伊予灘ものがたり」(初代=14年運転開始、2代目=22年)、「四国まんなか千年ものがたり」(17年)、「志国土佐 時代(トキ)の夜明けのものがたり」(20年)などで実力を蓄え、現在は特急「しおかぜ」「いしづち」用8000系電車やローカル用1200型気動車のリニューアルを実施中。
このほか、JR四国以外からの受託で、車内照明用LED灯具の組み立て、第三セクター鉄道関係の検査、修繕、工事なども実施。いずれにおいても安全、安心、快適な車両提供に心血を注いでいる。
全国に設備を供給する機械事業部
機械事業部は、荷役装置、車両検修用設備、洗浄装置などの設計、製造、設置から、駅の自動改札機、券売機、空調、エレベーター、エスカレーターの保守管理まで幅広く手掛けている。
製品は各種洗浄装置、天井クレーン、トラバーサー(遷車台)、転車台など多岐にわたり、納入先は西日本を中心に全国に展開。このうち洗浄装置については1977年以来の長い実績があり、車体、台車、主電動機、内燃部品、制動装置など対象ごとにさまざまなラインアップを開発・納入している。
長年の蓄積をベースに、PDCAサイクルを意識した品質向上、IoTを駆使した状態監視システム導入などで、耐久性、堅牢性、保守のしやすさなどに定評があるほか、部品関係の洗浄装置では一般的なメーカー製と異なり、同社製品は洗剤を使わず温水噴射のみで油汚れを落とすことができ、排水処理設備の負荷軽減や作業者の薬剤取り扱いの負担軽減につなげていることも特長。
このほか主力業務ではないものの、電化柱や踏切警報機柱などの製造も手掛けている。
■インタビュー
四国鉄道機械取締役会長 田中善一郎氏
発注者ニーズに即する強み
真面目に、正面から一生懸命、最後まで
――近年の状況を振り返って、いかがでしたか。
田中 お客さまをきれいな応接室でお迎えしようと10年前に本社を建て替えましたが、昨年は新たな本社工場が完成し、この6月には機械事業部事務所棟を建て替えて、本社敷地内の建物は全て新しくなりました。
コロナ禍においては、(取引先)各社の投資計画の見直しや凍結で先が読めなくなりましたが、それらが動きだした時に対応を間違えると次がありませんので、各社の動きをきちんと伺うということを続けてきました。
21年からは(多度津事業所がある)JR四国多度津工場の近代化が始まりました。計画変更に伴う工程調整が大変ですが、車両事業部と機械事業部が同じ課題を共有する中で、新たなものが出てくるのではないかという期待もあります。
――製品やサービスにどんな思いを込めていますか。
田中 当社は、提案はしますが売り込みはしません。発注者のニーズを一生懸命、素直に聞き、一緒に考えて作っていく。それが強みです。JR四国グループの中でも、ここまでものづくりを直接やっているところ(機械事業部)はないと思います。
また、(主にJR四国の車両メンテナンスをしている)車両事業部も、車両は四国外へも走りますし、メーカーも四国外にありますから、四国内に収まらない視線を持っています。日頃からの他社や四国外への意識は、当社には結構あると思います。
――四国鉄道機械のプライドとは。
田中 何に対しても真面目に、正面から、真摯(しんし)に、一生懸命、最後までやる、ということです。これは技術屋の一番大事なところだと思いますが、今まで(会社の先人が)守ってきていただいたことを今後も大事にしていきたいと思います。これまでと同様、自分たちが関わったものはしっかり「お守(も)り」をするし、そうすることで全国の鉄道事業者さんのお手伝いをしながら、われわれも学ばせていただければと思います。(S)
歴史を大切に、新たな挑戦も
◇谷口正樹代表取締役社長の話
今までの歴史を大切にしながら、時代にマッチした会社にしていきたい思いです。JR四国グループ中期経営計画にのっとり、四国外から稼ぐ一翼を担う目で、鉄道関連以外の製品開発や、車両部品のメンテナンスで培った中からできることはないかなど、チャレンジしていければと思います。
技術力生かし新分野めざす
◇大谷典哲常務・機械事業部長の話
自分たちの技術力が全国でどれぐらい通用するか、常に考えています。当社の製品は毎回違う現場、違う条件でお納めする〝一品料理〟ですが、現場の方から良い評価をいただけるのはありがたいです。今後も技術力を生かし、新たなものを開発し、新たな分野に進出できればと思います。
快適な車両提供の一翼担う
◇末包(すえかね)洋士取締役・車両事業部長の話
多種多様な業務を通じ、プロとして、安全、安心、快適な車両を提供する一翼を担っています。JR四国をはじめとする鉄道事業者の良きパートナーとして、無事故で仕事を完遂していきたいし、改造工事などを通じて技術力のさらなる向上を図っていきたいと思います。
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