JR九州 多機能検測車「BIG EYE」を開発
レール締結状態の撮影可能 24年度から運用開始へ
JR九州の古宮洋二社長は26日の定例会見で、新たな多機能検測車「BIG EYE(ビッグアイ)」を開発したと発表した。製造から45年が経過した高速軌道検測車(マヤ車)の老朽更新に伴うもので、従来の軌道検測や建築限界測定に加え、新たに部材検査支援カメラによるレール締結状態の撮影を可能にした。11月から来年3月まで、運用開始に向けた性能評価を行うための走行試験を実施し、2024年度からの運用開始を目指す。
検測車は、20年7月豪雨で水没の被害を受けたキハ220形気動車を活用。エンジンなど床下機器を一新するとともに、各種検測装置を追加する改造を施し、開発費を新造と比べて5分の1程度に抑えた。
メイン機能の軌道検測では、レールにレーザーを照射して変位を測定。従来は検測員3人が乗務して測定データを管理していたが、今回からデータを無線でサーバーに伝送する仕組みを導入し、運転士のみで検測できる。
建築限界測定は、駅ホームやトンネル、信号設備などに、車両前面に設けた装置からレーザーを照射し、3次元点群データを用いて、連続的に線路からの距離を測定する。
新たに機能追加した部材検査支援カメラは、9台のラインセンサーカメラを装着し、レールやレールとマクラギを固定する金具(レール締結装置)、レール同士をつなぐボルト類の状態を最高時速110㌔でも高精度に撮影できる。
これにより取得した画像データを用いてAI(人工知能)開発を進め、従来は作業員が目視で行っていた不良箇所の確認をAIで自動判定する技術の確立を目指す。
また、現在のマヤ車は客車のため、けん引するDE10形ディーゼル機関車の運用面で検測が制限された。一方、ビッグアイは自走できるため、年4回程度だった各路線の検測が毎月行えるようになり、検測頻度は約3倍にアップする。
検測エリアは、九州内の営業線と貨物線、回送線を含め約2400㌔に上る。高頻度検測によるビッグデータを活用したCBM(状態基準保全)への転換を図り、より安全で効率的なメンテナンスが期待される。
なお、赤をベースにした車両デザインは、建築業務に当たる社員5人が考案した中から社内コンペで決定。車体側面に軌道変位を表現した波形をあしらい、両端の〝顔〟には親しみを持たれるよう大きな目玉や牛をモチーフにした柄を配した。
走行試験は11月から来年3月まで実施。検測データの精度や機器の耐久性を検証するとともに、データ解析のシステム構築を図る。
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