JR九州 「SL人吉」ラストラン記念出発式 博多-熊本で最後の雄姿
JR九州のD&S(観光)列車「SL人吉」が23日、ラストラン企画として鹿児島線熊本―博多間を特別運行し、最後の営業運転を終えた。けん引機の58654号機は2度の復活を経て、2009年4月から約15年間にわたり同列車として活躍。この日は多くの鉄道ファンらが停車駅や沿道に駆け付け、最後の雄姿を目に焼き付けた。
同機は1922年11月18日に日立製作所笠戸工場で落成し、浦上機関区に配属。26年2月から若松機関区、68年6月から人吉機関区で活躍し、75年に廃車。肥薩線矢岳駅構内の「SL展示館」で静態保存されていた。
その後、JR九州が改修し、88年8月に「SLあそBOY」(豊肥線熊本―宮地間)として復活運転を開始。2005年8月の運転終了後、大規模改修工事が行われ、09年4月から「SL人吉」(熊本―肥薩線人吉間)として再び復活。20年7月の豪雨災害で肥薩線が一部不通となり、21年5月から鹿児島線鳥栖―熊本間を運行していた。
特別運行は通常と異なり、上りはディーゼル機関車、下りはSLがけん引し、熊本を7時40分、博多13時48分に出発。いずれも時速45㌔以下のゆっくりとしたスピードで片道約4時間かけて運行した。
同日は博多駅6番線ホームで、福永嘉之JR九州取締役・常務執行役員・鉄道事業本部長、鐘ケ江理恵駅長、客室乗務員が出席してラストラン記念出発式が開かれた。
福永本部長があいさつで「これまで走ってこられたのは、本当に多くの方々の助けと応援があったおかげであり、心より感謝申し上げる。本日ラストランを迎えるが、ぜひ皆さまにはSLの雄姿だけでなく、臭いや音、熱を記憶にとどめていただきたい」と語った。
続いて、鐘ケ江駅長から花束を贈られた客室乗務員の平野未紗さんが「本日多くのお客さまに見送られ、本当に愛された列車だと改めて実感します。これからも『SL人吉』は皆さまの心の中で火をともし走り続けると思います」と述べた。
この後、鐘ケ江駅長の出発合図で「SL人吉」が汽笛一声し、ゆっくりと動き出すと、見守ったファンから「ありがとう」「お疲れさま」などの声が上がった。
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