交通新聞社 電子版

元旦号 鉄道・運輸機構 今年の話題

2024.01.01
北陸新幹線の新たな終着駅となる敦賀駅のホーム(鉄道・運輸機構提供)

 安全で安心、環境にやさしい交通ネットワークを整備面から支え続ける鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構、JRTT)。新幹線をはじめとした欠かすことのできない交通インフラ整備を支援する立場を担い、人々の暮らしや経済を支えている。今年は3月16日、北陸新幹線金沢―敦賀間(線路延長約125㌔)の開業を控える。2030年度末の開業を目指す北海道新幹線についても、新函館北斗―札幌間(線路延長約212㌔)で、トンネル掘削などの工事が続いている。

 

 ■北陸新幹線

 工事延長115㌔、3月16日開業

 今年3月16日にいよいよ開業する北陸新幹線金沢―敦賀間。工事区間は白山総合車両所から敦賀車両基地までの工事延長約114・6㌔で、高架橋が全体の52%、トンネルが34%、橋りょうが13%、路盤1%と過半を高架橋が占める構造となっている。

 新規開業区間では、小松、加賀温泉、芦原温泉、福井、越前たけふ、敦賀の6駅を整備。主な構造物はトンネルが新北陸トンネル(越前たけふ―敦賀間、約19・8㌔)、加賀トンネル(加賀温泉―芦原温泉間、約5・5㌔)、第2福井トンネル(福井―越前たけふ間、約3・5㌔)など。橋りょうは手取川橋りょう(金沢―小松間、558㍍)、九頭竜川橋りょう(芦原温泉―福井間、414㍍)など。

 昨年9月23日から、完成した土木構造物・軌道・電車線・信号設備などの機能確認のため、営業運転で使うJR西日本のW7系新幹線車両などで走行試験を実施。段階的に速度を上げて走らせ、安全走行に問題がないことを確認した。車両走行試験の全工程が同12月8日に完了し、開業後の営業主体のJR西日本に管理を引き継いだ。

 

 ■北海道新幹線

 2月、長万部駅高架橋に着手

 30年度末完成を目指す北海道新幹線新函館北斗―札幌間は、雪に強い設計とした関係もあり、全工事延長212㌔のうち約8割がトンネル区間となる。山岳トンネルとしては日本最長となる渡島トンネル(約32・7㌔)をはじめ約169㌔を全17本のトンネルが占め、掘削工事に順次着手している。

 掘削が完了したトンネルは二股(新函館北斗―新八雲〈仮称〉間)、国縫(新八雲〈仮称〉―長万部間)、豊野(同)、昆布(長万部―倶知安間)、宮田(同)、ニセコ(同)の計6本。

 進路を阻害する岩塊群の出現で掘削停止していた「羊蹄トンネル」(長万部―倶知安間)の比羅夫工区(延長5569㍍)については、岩塊群除去と再発進に向けた各種準備が計画通り完了し、昨年11月、約2年4カ月ぶりに掘削を再開した。

 全工事延長のうち43㌔が高架橋や橋りょうなどの明かり区間。駅部を含む明かり区間の建設工事は5カ所あり、札幌駅を含めた4カ所で既に着手済み。残る長万部駅高架橋は今年2月ごろの着手を計画する。

 新駅は、新八雲(仮称)、長万部、倶知安、新小樽(仮称)、札幌の5駅で、このうち、新八雲(仮称)、長万部、倶知安、新小樽(仮称)について昨年10月、各駅舎の外観デザイン素案の提案書を沿線の各自治体に提示した。

 このほか、北海道新幹線工事では21年7月に制定した「鉄道・運輸機構改革プラン」の取り組みの一環として、入札契約制度の見直しを実施。契約後に詳細な図面や数量などを確定させて契約変更を行う概算数量発注方式や、工事契約を前提に優先交渉権者(施工者)の意見を設計段階から取り入れる新入札契約制度(ECI方式)などを採用し、リモートで建設現場の立ち合いなどを行う遠隔臨場や契約時などにおけるカーボンニュートラルの取り組み評価なども試行している。

 

 ■鉄道災害調査隊

 国交省と連携支援活動強化

 国土交通省からの要請に基づいて鉄道施設の被災現場に職員を派遣し、鉄道事業者などに被災状況調査といった技術的支援を行う「鉄道災害調査隊」を昨年4月に創設。近年、激甚化・頻発化する自然災害によって鉄道施設への被害が相次ぎ、被災時の支援活動や復旧に向けた取り組みが急務となっていることを踏まえて、同隊と同省が連携を深め、今年は支援活動のさらなる強化を図る。

 昨年は大井川鐵道、いすみ鉄道、小湊鐵道、くま川鉄道の計4事業者に派遣。徒歩踏査で鉄道施設の被害状況を把握し、必要な追加調査や復旧方法などに対する技術的助言を行い、被害状況の調査結果や技術的所見を取りまとめた「調査報告書」を各社に提出した。

 

 ■中期計画

 業務プロセス改革など推進

 昨年3月、確かな技術力、豊富な経験、高度な専門知識を最大限に発揮し、持続可能で活力ある国土・地域づくりの実現に貢献するという役割を果たすため、第5期中期計画を策定。期間は同4月から28年3月までの5年間で、今年は2年目に入る。

 鉄道・運輸機構改革プランの着実な実施を含む「業務プロセスの見直し等改革の確実な実施」、運輸施設の整備に関する技術力とノウハウをより一層活用する「運輸・交通分野を取り巻く課題への対応」、環境負荷低減に向けた取り組みを積極的に進めてSDGs(持続可能な開発目標)に貢献する「カーボンニュートラルの実現をはじめとする社会的課題への対応」を三つの柱に据える。

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