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連載 北陸新幹線金沢-敦賀間 工夫凝らした建設工事 鉄道・運輸機構 ⑥深山トンネル中池見湿地の環境保全対策

2024.02.29
「深山トンネル」の入口(鉄道建設・運輸施設整備支援機構提供)

 国際的に重要な湿地付近

 環境管理計画を初策定

 福井県敦賀市のほぼ中央に位置する中池見湿地は、多様な動植物を育み、2012年7月にラムサール条約に登録され、国際的にも重要な湿地として位置付けられている。「深山トンネル」(越前たけふ―敦賀間、全長約768㍍)は、同湿地付近を通る計画だったことから、環境保全に向けた対策が求められた。

 湿地や周辺環境に与える影響を極力回避するため、動植物や水文科学関係の有識者で構成する委員会を13年に設立。委員会からの提言を受け、認可ルートよりも湿地から約150㍍離れ、湿地の水を引き込むのを防ぐため最大約20㍍高い位置にすることで、環境への影響をより一層低減できるルートを選定した。

 併せて、湿地に及ぼす環境影響の一層の回避・低減を目的とした予防的措置や緊急対策、保全措置などを盛り込んだ「環境管理計画」を、新幹線の整備において初めて策定した。

 具体的な取り組みとして、一般的なトンネルは地下水を引き込んで排水するのに対し、同トンネルでは全周を厚さ約2㍉の防水シートで覆うことにより、地下水を引き込まずに地下水位の低下を抑制する非排水構造を採用している。

 また、地下水位や沢水の流量、水質などの水文環境や、動植物相に対するモニタリングを工事実施前から継続して行い、結果を前述の委員会のメンバーや環境省、沿線自治体といったステークホルダーに報告している。

 これを基にした意見交換を密に行う管理体制を構築し、モニタリング結果などは随時、鉄道建設・運輸施設整備支援機構のホームページに公開。工事への理解に努め、結果として湿地への直接的な影響を生じさせることなくトンネルを完成させた。

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