交通新聞社 電子版

特集 鉄道・運輸機構 「鉄道技術センター」新設 鉄道建設に関する技術力を強化

2024.05.23
今年4月に発足した鉄道技術センター(鉄道建設・運輸施設整備支援機構提供)

 技術者が〝集結〟

 鉄道建設・運輸施設整備支援機構は4月1日付で、鉄道建設に関する技術力を強化するため「鉄道技術センター」を新設した。本社の設計・設備・電気などの部署を同センターに再編。これまでの鉄道整備で培ってきた専門分野ごとの技術を結集することで、さらなる技術力の向上を目指す。渡邉修鉄道技術センター長、玉井真一鉄道技術統括役の話を交え、同センターの活動内容や役割、鉄道建設の今後の展望などを紹介する。(卜部 正太記者)

 

 技術向上と鉄道施設のライフサイクル一元管理

 わが国鉄道技術のプラットフォームに

 同センターでは、▽鉄道建設に関する専門技術の結集により、さらなる鉄道建設技術の向上▽鉄道〝建設〟技術から〝鉄道技術〟へ技術力のスパイラルアップの実現▽わが国の鉄道技術のプラットフォームとなること――の3点を目指す。技術の向上に加えて、調査・計画・設計・施工・維持管理といった鉄道施設のライフサイクルを一元的に担うことで、時代のニーズに対応した鉄道システムの構築に貢献する。

 

 企画部を新設

 同センター各部の主な業務内容として、企画部(企画課、管理課、維持管理課)は、組織横断的な調整・取りまとめ、技術マネジメントの統括などを行う。調査部(調査課、軌道課、運輸計画課)は、新線建設調査における企画・立案の実施のほか、昨年4月に創設した鉄道災害調査隊の実働部隊として、鉄軌道事業者の支援を担う。

 設計部(橋梁構造課、基礎・土構造課、地下構造課、積算課)は、鉄道施設の各種構造に関する技術開発と研究、設備部(設備企画課、機械課、建築課)は、機械設備や駅工事などに関する技術開発と研究、電気部(電気企画課、電気技術管理課、電力課、信号通信課)は、電気設備に関する技術開発と研究をそれぞれ担当する。

 また、同センターに常駐し、鉄道に関する技術系統全体を俯瞰(ふかん)したマネジメントを行う「鉄道技術統括役」を同日付で新たに設置。同機構の鉄道技術代表として、センターが実施する技術情報の収集や新たな技術開発の推進、鉄道技術に対する広報活動などを実施する。

 このほか、本社関係各部と東京支社の機能を同センターに集約することに合わせて、同支社を3月31日付で廃止し、主に神奈川東部方面線の残工事に対応する組織として「東京工事事務所」を新たに設けた。

 同センター所在地は東京都港区芝公園2ノ4ノ1、芝パークビルB館。職員数は約300人、鉄道技術者が大半を占める。

 

 ■インタビュー

 鉄道技術センター長 渡邉修氏

 鉄道技術統括役 玉井真一氏

 

職種の「縦割り」解消

技術者にバランス感覚を

――センター発足と就任にあたっての所感、抱負をお願いします。

 渡邉 これまで本社と東京支社に分かれていた技術者が一元的に集まった組織で「新しいことができるんじゃないか」というワクワク感を持っています。総勢300人弱とメンバーも多いので、鉄道技術者の塊として機能する組織をつくり上げていきたいと思います。

 玉井 鉄道・運輸機構の技術のビジョンを示していくことが鉄道技術統括役としての役割です。地方の事業者を中心に鉄道に携わる技術者の減少が問題となる中、さまざまな分野の技術者が集う組織を通じて、鉄道の技術自体を守り育てていくことをやっていかなければならないと考えています。「安全な交通手段を提供する」というわれわれに与えられた使命を果たしていきます。

――今回のセンター設立の背景と目的を教えてください。

 渡邉 鉄道に限らず技術者不足が建設分野の課題となる中で、より効率的に新しいことへ取り組んでいくためには、ある程度の集約が必要になります。また、技術の承継という面でも、各技術を集めることでそれぞれの知見を上手に受け継げるようにするという狙いがあります。加えて、自分たちの工事のフィードバックや成果の蓄積といった面にもセンターを通じて力を入れていきます。

――センター職員の皆さんに期待することやメッセージをお聞かせください。

 渡邉 これまでに自分が取り組んでこなかった分野も含め「一緒に鉄道技術者になろうよ!」と呼び掛けていきたい。DX(デジタルトランスフォーメーション)やICT(情報通信技術)など、新しいことを何でもやってみてほしいですね。

――現在の鉄道技術者の育成に関して、どのような課題があるとお考えですか。

 玉井 「鉄道技術者でなくて電気技術者」のように、職種ごとの縦割りになっている部分を解消する必要があります。鉄道建設の課題解決には、専門性と合わせてオールラウンドな部分も求められ、バランスの取れた水平的な鉄道技術者を育てていきたいと考えています。

――今後のセンターの役割と展望をお願いします。

 渡邉 関係各所からお話を伺う中で、われわれの理念に共感してくださる方やセンターへの期待が大きく、良い意味でのプレッシャーを持っています。「鉄道技術の総本山」として頼ってもらえる組織となるように、さまざまな新しいことを手掛けていくことが重要だと思います。

 玉井 各部署と連携を取り、何をやっているかを把握するため、センター発足に合わせて企画部を新設しました。共通的な課題を見つけて皆で議論を重ねることで、職員が広い視野で物事を考えられるようになり、機構やセンターに求められる役割を果たせるのではと考えています。

 ◇渡邉 修(わたなべ・おさむ)氏略歴 1991年3月名古屋大学工学部卒業後、同年4月日本鉄道建設公団(現・鉄道建設・運輸施設整備支援機構)採用。新幹線部長、事業監理部長、総務部長、審議役などを経て今年4月から現職。愛知県出身。57歳。

 ◇玉井 真一(たまい・しんいち)氏略歴 1987年3月東京大学大学院工学系研究科土木工学専門課程修了。2002年4月日本鉄道建設公団採用。設計技術部長、設計部長、審議役などを経て今年4月から現職。東京都出身。62歳。

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