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中小鉄道 相次ぐ値上げ 24年春 受益者負担避けられず

2023.12.27
えちぜん鉄道では、今年夏から新たな観光列車「恐竜列車」の運行を開始(えちぜん鉄道提供)

 全国の中小鉄道事業者で2024年春、鉄道旅客運賃を改定する動きが顕著になってきた。コロナ禍はじめ少子化・高齢化の進展による収入減、働き方改革などによる移動形態の多様化など、鉄道事業を取り巻く経営環境は厳しさを増している。運行形態などの変更、運用効率化などのコストダウンに取り組む一方、鉄道施設面での維持管理も輸送の安全・安定を支える上では不可欠で、地域の公共交通機関として存続していくためにも受益者負担の増加は避けられないというのが実態のようだ。

 

 利用者減少 維持費高騰

 

 【芝山鉄道】 経営努力の限界に

 「日本一短い鉄道」を自認する千葉県の芝山鉄道は3月16日、02年10月以来となる運賃改定を実施する。平均改定率は10・0%。普通運賃と通勤定期を軸に初乗り運賃を大人200円から220円、子ども100円を110円にそれぞれ変更する。

 輸送人員は08年度以降減少傾向が続いており、23年3月期決算の最終損失は7443万円で赤字額は前期の4885万円から膨らんだ。運賃改定は「新型コロナウイルス感染症の影響による輸送人員の大幅減、昨年からのエネルギー価格の高騰に伴う動力費などの増大により経営努力の限界にある」というのが理由で、新たに得られた収入は老朽化した鉄道施設・設備等の更新投資に充てるという。

 

 【流鉄】 慢性的な赤字体質

 同じ千葉県の流鉄は4月1日に運賃改定する。1989年10月以来、約35年ぶり。首都圏新都市鉄道つくばエクスプレス線や他社路線バスの開業などの影響を長年受けており、旅客数は開業前の2004年度から49%減少(22年度比)、鉄道事業は慢性的な赤字体質が続いている。

 老朽化する施設、車両などの維持費用には不動産事業などによる内部援助で賄ってきたが、それも限界で、現行運賃水準での鉄道運行の維持は困難であると判断した。改定率は定期外9・743%、定期10・058%(通勤10・044%、通学10・144%)、初乗り運賃は130円から140円に変更する。23年3月期の最終損失は前期の682万円から2364万円に悪化している。

 

 【えちぜん鉄道】 新幹線の延伸が鍵

 北陸のローカル線・えちぜん鉄道の運賃改定は3月16日で、03年開業以来の実施となる。動力費(電気料)や資材価格の高騰などに対応し、安定的な経営を行うのが目的だ。普通運賃、通勤定期に加えて通学定期も改定。通学定期の改定率は通勤定期の約2分の1に抑制した。平均改定率は10・3%で、普通運賃の初乗り運賃は160円から180円、距離に応じて20~50円の値上げを行う(特定区間は調整)。企画乗車券の価格も改定する。

 北陸エリアでは3月16日の北陸新幹線金沢―敦賀間延伸開業でさらなる旅客流動が期待されるが、それでも運賃改定に踏み切らざるを得ない状況で、観光客のさらなる集客増が収益改善の鍵を握る。23年3月期の最終損益は前期の5800万円の黒字から7000万円の赤字に転落している。

 

 【舞浜リゾートライン】 人気パーク鉄道も

 運賃改定は少子化・過疎化が進展する地方だけの話ではない。観光地として多くの人出を集める千葉県の東京ディズニーリゾートでも、パーク内での旅客輸送を担う舞浜リゾートラインが3月に実施する。平均改定率12・4%。このうち、普通運賃は大人260円から300円(改定率15・4%)に改定するが、同社では「消費税率の引き上げに伴う旅客運賃の改正を除き07年4月以来、現行の運賃水準を維持してきた」と理由を説明する。

 電気料金改定に伴う動力費の増加、工事・修繕資材、労務単価などが年々上昇する中、既存設備の償却費や維持管理費に加え、安全対策基準に適合する駅舎の大規模修繕、変電所設備や出改札システム更新への投資に充当する。列車内・駅構内防犯対策にも運賃改定分を活用していくとした。

 23年3月期の鉄道事業売上高は、51億円で前期の31億円からは増収、最終損益は前期の18億円の赤字から9億円の黒字に転換している。なお、東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドの23年3月期決算は売上高4831億円(前期比75・2%増)、営業利益1111億円(1338・0%増)、経常利益1117億円(891・2%増)、最終利益807億円(900・7%増)の大幅な増収増益となっている。

 

 各地で続々と

 来春の運賃改定は、豊橋鉄道(3月16日)、智頭急行(特急料金のみ、3月16日)、福井鉄道(3月16日)、伊豆箱根鉄道大雄山線(同)、黒部峡谷鉄道(4月1日)、遠州鉄道(同)と北陸新幹線延伸開業絡みでIRいしかわ鉄道(3月16日)も実施する。

 運賃改定の動きは今年春以降、大手民鉄事業者でもあったが、大手は「鉄道駅バリアフリー料金制度」などを理由とした運賃改定が多く、利用者減少などに悩む地方とは趣旨がやや異なっている。

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