元旦号 JR九州 今年の話題
中計最終年、着実に推進
3期連続増収、大幅な増益
香椎線で自動運転を本格運用
新多機能検測車で頻度3倍に
コロナ禍からの回復が進む中、「JR九州グループ中期経営計画2022―2024」の最終年として、数値目標の確実な達成、さらにはコロナ禍前の成長軌道への復帰を果たすべく、グループの総力を挙げた着実な計画の推進が求められる。
経営状況をみると、2024年3月期第2四半期連結決算では、鉄道事業をはじめ各事業における需要が緩やかに回復し、売上高は前年同期比112・1%の1907億円と3期連続の増収に。18年度比は194億円減の90・7%。増収に伴い各利益も大幅な増益となった。
鉄道運輸収入は、新在計で定期92・8%、定期外(近距離、中長距離)93・5%と、西九州新幹線(22年9月開業)効果はあるものの、いずれもコロナ禍前の水準に戻りつつある。直近の鉄道取扱収入実績をみると、10月期は近距離105・2%、中長距離94・2%、11月期(28日までの速報値)はそれぞれ102・7%、93・7%と、さらに回復傾向を高めている。
同計画の数値目標は、最終24年度の連結売上高4400億円、営業利益570億円。これに対し、23年度通期見通しは、売上高4170億円、営業利益457億円を予想。24年度では売上高約230億円、営業利益約113億円の積み増しが必要となる。
西九州新幹線さらなる飛躍
西九州新幹線(武雄温泉―長崎間)は、開業から1年間の累計利用者数が242万人で、1日平均約6600人(18年度在来線特急利用比102%)。2年目に入ると、10月7100人(108%)、11月7800人(114%)と利用が急増しており、さらなる飛躍が期待される。
また、新幹線定期券「エクセルパス」の利用者数も昨年10月末時点で481人と、開業前の特急定期券(長崎―諫早間)を上回っており、新幹線の利便性が着実に浸透し、生活路線として定着しつつあることを示している。
一方、JR九州初のBRT(バス高速輸送システム)として昨年8月開業した日田彦山線BRTひこぼしライン(添田―日田間)は、当初予想を大幅に超える1日約370人が乗車。この間は開業景気や秋の行楽シーズンもあって、今後の動向に真価が問われる。
長崎マリオット今月16日開業
今年の話題としては、年明け早々の今月16日に、JR長崎駅ビル内に「長崎マリオットホテル」(JR九州ホテルマネジメント運営)を開業する。九州初の「マリオットホテル」ブランドとなり、国内外からの富裕層の獲得が期待される。
ホテルは、JR九州が同駅東口に建設した13階建て大型複合ビルの上層階(7~13階)に入居。国内外のゲストの多様なニーズに応える5タイプ13種類全207室を用意する。全室36平方㍍以上のゆとりある空間に、ゆったりと休めるダブルサイズ以上の大きなベッドを備えるのが魅力だ。
同じく開発系では、福岡市博多区でJR九州を代表とする3社の企業グループが福岡東総合庁舎敷地有効活用事業として開発を進める新ビル「コネクトスクエア博多」が3月に竣工(しゅんこう)予定。また、博多駅線路上を立体的に活用する「博多駅空中都市プロジェクト」は、28年末の完成に向けて準備工事が進む。
鉄道関係では、いよいよ3月から香椎線の一部列車で全国初の「GOA2・5自動運転」の本格運用が始まる。古宮洋二社長が鉄道事業本部長時代にスタートさせた肝いりのプロジェクトで、7年の歳月を経てついに結実する。
GOA2・5自動運転は、運転士以外の自動運転乗務員(GOA2・5係員)が前頭乗務する。将来にわたる労働力人口減少の中で必要な人材の確保に寄与する一方、運転業務の負担軽減に伴い乗客へのサービス向上にもつながると期待される。
さらに、既存インフラを生かしたATS(自動列車停止装置)区間における自動運転も全国初の事例となり、導入コストを大幅に抑える自動運転のモデルケースとして、大手民鉄や地方鉄道にも波及していきそうだ。
24年度に入ると、新たに開発した多機能検測車「BIG EYE(ビッグアイ)」が運用を開始。従来の高速軌道検測車(マヤ車)による軌道検測や建築限界測定に加え、新たに部材検査支援カメラによるレール締結状態を撮影できる。
客車のマヤ車に対しキハ220形気動車を改造したビッグアイは自走できるため、年4回程度だった各路線の検測が毎月行えるようになり、検測頻度は約3倍にアップする。将来的には高頻度検測によるビッグデータを活用したCBM(状態基準保全)への転換を図り、より安全で効率的なメンテナンスが期待される。
DCに合わせ新D&S列車
営業面では、15年間活躍したD&S(観光)列車「SL人吉」が3月末で姿を消す一方、4~6月の「福岡・大分デスティネーションキャンペーン」(DC)に合わせて、両エリアをまたぐ久大線に新たなD&S列車「かんぱち・いちろく」が誕生する。
今秋にはQRコードを活用したチケットレスサービスを導入。インターネット列車予約で購入したきっぷを発券することなく、手持ちのスマートフォンで乗車できる。当初は博多発着に限られるが、対象エリアを順次拡大する計画で、将来にわたる利便性向上が図られる。
九州新幹線が3月で20周年
最後に、JR九州初の新幹線として04年3月開業した九州新幹線新八代―鹿児島中央間が、今年で開業20周年を迎える。この間に培われた運営ノウハウや地域活性化策はJR九州の新幹線の歴史そのものであり、その足跡を振り返る契機の年にもなる。
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2024.05.13 民鉄・公営・三セク 決算・財務
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大幅な増収増益【日本電設工業】 鉄道各社の旅客収入の回復に伴い、設備投資の増加や都市圏の再開発、既設インフラの老朽化対策が進んだことなどから経営環境は緩やかに
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