特集 鉄道・運輸機構 「建設DXビジョン」を作成
幅広い分野で〝シンカ〟への取り組み
今年10月、設立20年を迎えた鉄道建設・運輸施設整備支援機構(JRTT、鉄道・運輸機構)。この節目の年に、20~30年後の達成を目指すべき目標を取りまとめた「建設DXビジョン」を作成した。若手・中堅社員が中心となり、DX(デジタルトランスフォーメーション)を中心とした新技術活用の位置付けとして、幅広い分野での取り組みを盛り込んだ。キーワードは「シンカ」、その中身を紹介する。(卜部 正太記者)
■「建設DXビジョン」検討の経緯と背景、現状の課題
2021年7月に取りまとめられた「鉄道・運輸機構改革プラン」の取り組みの一環として、同機構では建設DXの検討を進めてきたが、今回、今年4月にスタートした第5期中期計画と合わせて、鉄道建設部門に特化したデジタル戦略の「建設DXビジョン」を策定した。
機構設立からの20年間で社会は大きく変化し、日本社会や鉄道建設の持続可能性に対する課題が顕在化した。少子高齢化など、今後の社会変化を見据えた対応が求められる中、同機構は中期目標として、「持続可能性」「デジタル化」「安全・安心」「環境」「技術者不足への対応」などを設定。これらの課題への対応が必要となる。
このうち、「持続可能性」は、15~64歳の人口が2020年の7508万人から2070年には4523万人となる見込みで、中長期的な労働人口の減少化は避けられない。
「安全・安心」は、ひとたび大きな鉄道事故が発生すると社会的に深刻な影響を及ぼし、鉄道建設の殉職者は減少傾向にはあるもののゼロにはなっていない。また、気候変動の影響もあり、毎年のように激甚災害が発生している。
これらの諸課題に対応していくため、設立20年を契機に、次の20年を担う若手・中堅社員が中心となって、数十年後の達成を目指すための同ビジョンを作成した。
国の計画やJR各社、建設会社も含めた技術開発動向を考慮し、「持続的な社会に向けて〝シンカ〟する」をコンセプトに掲げ、さらに安全で地球にやさしい鉄道への〝進化〟、これまで培った技術や事業遂行能力の〝深化〟、新技術を積極的に導入して、絶えず変革する組織への〝新化〝という三つに取り組み、機構の〝真価〟を発揮していく。
■鉄道の建設現場の〝シンカ〟
「鉄道の建設現場のシンカ」には、①ロボットやICT(情報通信技術)を活用し、現場作業を自動化・遠隔化・最適化②3Dプリンターなどの活用で現場作業を効率化③AI(人工知能)が現場のビッグデータを分析して調査・管理等を効率化④危険な箇所での作業を無人化し、労働災害・公衆災害をゼロに⑤建設現場から発生する二酸化炭素(CO2)の大幅削減⑥建設業の技術と魅力を伝承――を掲げる。
このうち、①ではレール敷設、電気設備工事の自動化や橋・トンネルなどの無人化施工などを目指す。④は気象・地盤・周辺環境などの工事現場周辺のあらゆるデータをAIで解析して、工事中止の判断といった現場の安全管理や施行管理の最適化に活用する考えだ。
■サイバー空間を活用しオフィスを〝シンカ〟
「サイバー空間を活用しオフィスを〝シンカ〟」では、①サイバー空間を通じてどこでも効率的に勤務を可能に(本社・現場などの地理的な概念をなくす)②AIを活用し作業効率を飛躍的に向上③サイバー空間での試験を通して安全性を向上④サイバー空間で環境への影響をシミュレート⑤技術を習得し伝承できる環境の構築――を目標にする。
①の効率的な勤務の取り組みに関して、同機構では、サイバー空間での鉄道走行や建築限界シミュレーション(VRAIN)やタブレットを活用した開業監査指摘事項整理表アプリを導入。生産性向上に注力している。
■鉄道運行や技術支援を〝シンカ〟
「鉄道運行や技術支援を〝シンカ〟」では、①新技術を活用しライフスタイルの多様化に対応②全ての新幹線が自動運転化することを前提とした安全対策③さらに人にも環境にもやさしい鉄道に進化④全ての鉄道の進化に向けての支援・協力を目指す。
②安全対策の最新の技術開発動向では、来年3月16日開業予定の北陸新幹線金沢―敦賀間の「地上監査・検査」で、3Dレーザーによるトンネル内の建築限界測定や打音検査を実施。当該装置で測定した区間では、監査・検査に要する人日が半分程度に改善した。
■「建設DXビジョン」実現に向けて
「建設DXビジョン」の実現に向けたチャレンジとして、ビジョンを実現するロードマップの作成、マップに沿った新技術の開発・活用、新技術を導入するための基準などの整備、多様な主体・計画との連携、ビジョンに対する理解と共感、ビジョンを踏まえた機構の新たな仕事の検討を掲げる。
このうち、多様な主体・計画との連携に関して同機構の藤浪武志建設企画部担当課長は「国やJRをはじめとした鉄道事業者、建設会社の方々とともにロードマップの具体的な中身を詰めていければと思っている。新技術をどのような形で深化させるかについてはJR各社の協力が不可欠であり、ビジョン作成の過程でも行ってきた意見交換を各社と進めながら今後も連携していきたい」と話す。
ビジョンに対する理解と共感では、より一層の周知に向けて、報告会、パンフレット配布といった取り組みを検討している。
検索キーワード:鉄道・運輸機構
75件見つかりました。
41〜60件を表示
-
2024.02.29 政府・省庁・鉄道運輸機構 予定・計画・施策
鉄道・運輸機構 ユーチューブで動画「北陸新幹線 敦賀延伸区間の前面展望」を公開
鉄道建設・運輸施設整備支援機構は、ユーチューブで動画「北陸新幹線 敦賀延伸区間の前面展望」を公開している。
-
2024.02.28 政府・省庁・鉄道運輸機構 コラム・企画類
連載 北陸新幹線金沢-敦賀間 工夫凝らした建設工事 鉄道・運輸機構 ⑤架道橋
迅速施工や難条件克服 加賀細坪橋りょう PC工学会から作品賞 「加賀細坪橋りょう」(加賀温泉―芦原温泉間、長さ約339㍍)は、JR北陸線大聖寺駅の南側に位置し
-
2024.02.27 政府・省庁・鉄道運輸機構 コラム・企画類
連載 北陸新幹線金沢-敦賀間 工夫凝らした建設工事 鉄道・運輸機構 ④九頭竜川橋りょう
新幹線初、道路と橋脚併用 コストや工期を縮減 芦原温泉―福井間の「九頭竜川橋りょう」(全長414㍍、幅37・7㍍、福井市)は、全国の新幹線で初めて鉄道と道路の
-
2024.02.26 政府・省庁・鉄道運輸機構 予定・計画・施策
鉄道・運輸機構 動画「北陸新幹線(金沢・敦賀間)建設工事の軌跡」を公開
鉄道建設・運輸施設整備支援機構は、ユーチューブで動画「北陸新幹線(金沢・敦賀間)建設工事の軌跡」を公開している。
-
2024.02.22 政府・省庁・鉄道運輸機構 コラム・企画類
連載 北陸新幹線金沢-敦賀間 工夫凝らした建設工事 鉄道・運輸機構 ③敦賀駅
整備新幹線駅で最大規模 建物全体に浮遊感演出 今回の開業により新たに東京方面からの終着駅となる敦賀駅。
-
2024.02.21 政府・省庁・鉄道運輸機構 コラム・企画類
連載 北陸新幹線金沢-敦賀間 工夫凝らした建設工事 鉄道・運輸機構 ②福井開発高架橋
LRV工法で工期を短縮 「土木学会技術賞」受賞 福井駅周辺の高架橋工事は、JR北陸線、えちぜん鉄道の線路に挟まれた部分のため、狭いヤードでの施工となり、安全面
-
2024.02.20 政府・省庁・鉄道運輸機構 コラム・企画類
連載 北陸新幹線金沢-敦賀間 工夫凝らした建設工事 鉄道・運輸機構 ①福井駅高架化工事
三つの高架化、一体施工 狭いエリアで効率的に 3月16日の北陸新幹線金沢―敦賀間延伸開業まで残りあと1カ月を切った。
-
2024.02.05 民鉄・公営・三セク 予定・計画・施策
東京臨海高速鉄道 鉄道・運輸機構 「都心部・臨海地域地下鉄整備事業」で合意
東京臨海高速鉄道は2日、「都心部・臨海地域地下鉄整備事業」の事業計画の検討を行うことで、東京都と鉄道建設・運輸施設整備支援機構との間で合意に達したことを明らか
-
2024.01.30 政府・省庁・鉄道運輸機構 予定・計画・施策
国交省 北陸新幹線金沢-敦賀間 鉄道施設完成検査完了の合格書を交付
「能登半島地震」被害生じず 国土交通省は26日、3月16日に開業予定の北陸新幹線金沢―敦賀間(検査延長115・9㌔)の鉄道施設の完成検査完了を受け、JR西日本
-
2024.01.24 政府・省庁・鉄道運輸機構 インタビュー・会見
記者会見 斉藤鉄夫 国土交通大臣
のと鉄道の復旧について―― のと鉄道和倉温泉―穴水間のうち、まずは和倉温泉―能登中島間について、JR七尾線の七尾―和倉温泉間と合わせて2月中旬の運転再開を目指
-
2024.01.17 政府・省庁・鉄道運輸機構 予定・計画・施策
鉄道・運輸機構 ユーチューブで北陸新幹線動画を公開中
鉄道建設・運輸施設整備支援機構は、ユーチューブで動画「北陸新幹線(金沢・敦賀間)に使われた最新技術とは!?」を公開している。
-
2024.01.11 政府・省庁・鉄道運輸機構 予定・計画・施策
鉄道・運輸機構 のと鉄道七尾線に「鉄道災害調査隊」を派遣
鉄道建設・運輸施設整備支援機構は9、10日、「令和6年能登半島地震」でホームの損傷や線路上の土砂災害などの被害が発生しているのと鉄道七尾線に、鉄道災害調査隊(
-
2024.01.05 政府・省庁・鉄道運輸機構 予定・計画・施策
鉄道・運輸機構「鉄道災害調査隊」 のと鉄道に派遣 国交省職員も
鉄道建設・運輸施設整備支援機構は、令和6年能登半島地震で被災した第三セクター鉄道・のと鉄道の状況把握と復旧方法などについての技術的助言を行うため、9、10日の
-
2024.01.01 政府・省庁・鉄道運輸機構 特集
元旦号 鉄道・運輸機構 今年の話題
安全で安心、環境にやさしい交通ネットワークを整備面から支え続ける鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構、JRTT)。
-
2024.01.01 政府・省庁・鉄道運輸機構 特集
年頭あいさつ 鉄道・運輸機構・藤田耕三理事長
新年あけましておめでとうございます。 令和6年の年頭にあたり、一言ご挨拶を申し上げます。 昨年、当機構は、設立20年の節目を迎えました。
-
2023.12.25 政府・省庁・鉄道運輸機構 予定・計画・施策
鉄道・運輸機構 北陸新幹線 動画「中池見湿地の環境対策」を公開
鉄道建設・運輸施設整備支援機構は、ユーチューブで動画「中池見湿地の環境対策~2024.3.16 北陸新幹線(金沢・敦賀間)開業!~」を公開している。
-
2023.12.20 政府・省庁・鉄道運輸機構 予定・計画・施策
鉄道・運輸機構 ユーチューブで動画「北海道新幹線の停車駅!長万部町ってどんなところ?町民に聞いてみた!」を公開中
鉄道建設・運輸施設整備支援機構は、ユーチューブで動画「北海道新幹線の停車駅!長万部町ってどんなところ?町民に聞いてみた!」を公開している。