JR東日本 山手線 車内の状況、指令がリアルタイム確認
地車間通信機能検証中 映像と列車番号ひもづけ
八幡電気産業とシステム構築
JR東日本は、列車内セキュリティー向上の取り組みとして、山手線E235系1編成に「地車間通信機能」を試験導入し、営業列車で有用性の検証を行っている。車内防犯カメラの映像と列車番号をひも付けし、非常通話装置が扱われると指令などがリアルタイムで映像を確認できる画期的なシステムの実現には、車内放送装置のパイオニアとして知られる八幡電気産業(東京都港区)が大きな役割を果たしている。
JR東日本はこれまで、テロ対策や犯罪抑止効果による安全性確保、サービス向上を目的に、新幹線約1300両と首都圏の在来線約8500両への車内防犯カメラ整備を、それぞれ2021年10月、19年3月までに完了。地車間通信機能は、20年から新幹線(E2系、E3系の一部を除く)で導入している。
山手線に試験導入した同機能は、指令などのモニター画面に表示されている列車番号から号車を選択すると、防犯カメラのリアルタイム映像を確認できる。非常通話装置が扱われると、列車番号は黄色に変化する。
カメラ映像や非常通話装置のシステムを、指令が日常的に使う列車番号とひも付けたのがポイントで、ワンクリックで当該列車の映像を見られるシステムだ。異常時は状況の早期把握が重要であり、乗務員支援に貢献する。
さらに、映像は編成内でネットワーク化して地上拠点へ伝送することで、通信費などのランニングコストを抑えた仕様に。1両4台のカメラそれぞれで携帯電話回線を契約するのではなく、各号車の映像を車内のWi―Fiネットワークを使って先頭車に集約し、そこから携帯回線で伝送する方式とした。携帯回線は先頭車2回線のみになり、通信コストは理論上4・5%にまで抑えられる。
また、新たな機能として、録画されている映像を日時や号車、カメラを選択して、指令や車両基地でダウンロードできるようにした。これまでは車両に直接取りに行かなくてはならなかったので、大幅な負担軽減になる。地車間通信機能は本年度上期までE235系1編成で機能確認を行い、有用性の検証を行った上で山手線全編成に展開していく予定だ。
八幡電気産業は1951年創立。現在の車内放送装置の基本となる分散方式を開発し、国鉄に電車用放送装置として規格承認され全国に展開してきた。一方で、2012年度に前方カメラを中央快速線に納入(山手線は14年度)するなど、近年はカメラが車内放送装置と並ぶ柱に成長。18年には日本初となる無線方式のWi―Fiネットワークカメラを開発し、山手線に納入した。地車間通信機能付き車内防犯カメラは、このカメラを活用している。
「今までは伝言ゲームだった。映像がないためお客さまの状況が分からない。指令と乗務員のやり取りは列車無線で、会話の中から車内で何が起こっているかを想像するので、状況把握に時間がかかっていた」とJR東日本鉄道事業本部モビリティ・サービス部門車両技術センターの担当者は語る。
E235系には列車情報管理装置「INTEROS(インテロス)」が搭載されているが、防犯カメラは改造で後付けしたため、連携はしていなかった。車両は車両の情報装置、防犯カメラシステムは防犯装置として独立していたのを、両社が協力してシステムを設計した。
構想から約2年。大量の情報、データの中から何を使うか。「システムが違うものをどのように融合させるかが一番の課題だった」が、ソフトウエアの処理制御を工夫し、今ある仕組みを使って廉価に「あたかも自然にできたかのようにシステムを構築した」。
車上サーバーや中継装置などシステム全体を考えて設計できるのは、車両の情報システムに精通したメーカーだからこそと、八幡電気産業の技術力が高く評価されている。
山手線には、非常通報システムや車内防犯カメラなどのセキュリティーカメラシステムをはじめ、車内放送連絡システムや前方カメラシステム、電子警報システム(電気笛)にも、八幡電気産業の製品が採用されている。同社は今後も事業者のニーズをくみ取って、乗務員支援につながる新たな製品を開発できればと意気込む。
山手線への地車間通信機能導入は「緊急時の即応性を高める」ものと期待されており、同線は首都圏の顔としてさらに進化を続けていく。
検索キーワード:JR東日本
3,626件見つかりました。
361〜380件を表示
-
2024.09.19 その他業種分類 会合・催事
交通建設 「第2回機械化作業交流会」
将来の合同作業見据え 交通建設はこのほど、JR東日本横浜支社の訓練設備である横浜ベイサイドトレーニングセンター訓練線(横浜市鶴見区)で「第2回機械化作業交流会
-
2024.09.19 JR東日本グループ 予定・計画・施策
JR中央線コミュニティデザイン 「くにたち魅力発見フェア」
JR東日本グループのJR中央線コミュニティデザインは21、22日、中央線国立駅南北通路で一橋大学公認学生団体澁澤塾クニプロ(東京都国立市)と連携した「くにたち
-
2024.09.19 その他業種分類 記録・調査・統計
月間日誌 24年8月
【国土交通省関係】 宮崎県日向灘を震源とするマグニチュード7・1の地震発生に伴い、気象庁が南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)を発表=地震発生想定震源域内の
-
2024.09.19 JR東日本 予定・計画・施策
JR東日本 テーマは「ナマハゲ」 第19回「東北歴史文化講座」
JR東日本は、第19回「東北歴史文化講座」を12月13日に開講する。テーマは「神々と生きる町、秋田の民俗学入門~ナマハゲはどこから来るか~」。
-
2024.09.19 民鉄・公営・三セク 営業・事業・車両
三陸鉄道・JR盛岡支社 「震災学習列車」ツアー
岩手県の第三セクター鉄道・三陸鉄道は、JR東日本盛岡支社、JR東日本びゅうツーリズム&セールスと共同で「震災学習列車」ツアーを11月11、29日の2日間催行す
-
2024.09.19 JR西日本 予定・計画・施策
JR西日本 山陽新幹線で自動運転 30年代の開始目指す
JR西日本は18日、2030年代に山陽新幹線で自動運転(GOA2)を開始する計画を発表した。
-
2024.09.18 JR東日本グループ 予定・計画・施策
JR東日本ビルディング 「東京サピアアカデミー」10月20日開催
気象予報士・森田氏が基調講演 JR東日本ビルディング(JEBL)は10月20日、JR東京駅日本橋口のサピアタワー内ステーションコンファレンス東京で「東京サピア
-
2024.09.18 JR北海道 記録・調査・統計
JR北海道 24年度第1四半期線区別収支(4~6月)を発表
札幌圏、初の黒字に JR北海道は13日、管内全20区間(札幌圏4区間は1区間換算)の本年度第1四半期線区別収支(4~6月)を発表した。
-