交通新聞社 電子版

墨滴 10月30日付

2023.10.30

 黎明(れいめい)期の鉄道遺構「高輪築堤」が鉛筆に姿を変えて復活――。JR東日本とコクヨ(大阪市)が、「コクヨデザインアワード2020」グランプリ受賞作「記憶のえんぴつ」の第3弾として、同築堤の木材を活用した鉛筆と鉛筆削りを製品化する▼19年に東京・高輪地区で出土した同築堤を、21年1月に見る機会があった。美しい石積みや橋台跡などが連続する光景は、鉄道開業当時の様子をしのばせ、盛土の基礎部分には波よけ用の無数のくいが当時の海底面に打たれている様子も確認できた▼鉛筆として生まれ変わるのは、その松くいや築堤内部の胴木などの木材。酸素が行き届かない地中で約150年間密閉状態だったため、腐敗を免れていた。東京都港区教育委員会の記録保存調査後に処分予定だったものを、JR東日本がコクヨに提供した▼製品化に当たって乾燥させた木材の表面はひび割れて荒々しいが、古色が醸す風合いは風格が漂う。木材によって青みがかった白やグレーなど表情も豊か。職人が1本ずつ魂を吹き込むように仕上げ、現代によみがえらせた▼文明開化の時代に鉄道を支えた誇りは? 海辺の土の中の寝心地は? 長い眠りから覚め、見違えた東京の景色を見た思いは? 鉛筆に生まれ変わって未来へ伝えたいことは? 手の中に収まる「えんぴつの記憶」に尋ねてみたい。

検索キーワード:JR東日本

3,626件見つかりました。

121〜140件を表示

<

>