日本鉄道車両機械技術協会「23年度全国『車両と機械』研究発表会」 日本鉄道車両機械技術協会会長賞
E353系車両モニタリングデータによる動揺防止制御装置アクチュエータゴムブッシュ亀裂の検知
JR東日本首都圏本部松本車両センター
E353系には、曲線の連続する山間部を高速走行することで発生する車体横揺れに対する乗り心地向上のためのフルアクティブ動揺防止制御装置が搭載されている。
2022年11月、走行中に床下から異音がするというお客さまからの申告を受けて調査したところ、車体と台車間に設置されている動揺防止制御装置のアクチュエータ取り付け部ゴムブッシュの破断を発見した。異音の原因はゴムブッシュの破断によりアクチュエータ本体が垂下し台車上のブレーキ配管に接触していたためで、ブレーキ配管は破損寸前の状態だった。ゴムブッシュの破断原因は走行中に設計想定より大きな荷重がかかったものと想定されたが、詳細は解明されていない。
車両モニタリングデータではアクチュエータ変位量が取得できるが、波形データからは異常の有無を判別することは難しい。そこで変位量の特徴を「特徴量」として算出して異常判定の指標にすることにした。
特徴量が増加傾向である編成・部位を抽出し、実際にゴムブッシュに異常があるか現車点検を行ったところ、特徴量の増加と亀裂の進行に相関性があることを確認できた。
松本車両センターの自動解析システムに特徴量上昇を検知する機能を組み込み、ゴムブッシュ亀裂の可能性があるものを一覧表に示して早期検出するようにした。専用の閲覧ソフトも作成した。これにより、データ分析担当者以外でも状態把握・判断が可能になり、迅速な点検・修繕計画の策定が可能になった。
特徴量変化による異常検出の仕組みを導入したことで、その後は27件のゴムブッシュ亀裂を発見、アクチュエータ交換を行った。アクチュエータ垂下によるブレーキ管破損を未然防止したことで、列車の安全安定輸送にも寄与することができた。
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